日銀短観とは年に4回日銀が発表する調査結果!注目される理由も解説
日銀短観とは、日本銀行が企業に対して調査した結果を年4回発表するものです。とくに業況判断指数(DI)を確認すれば、経営者の考える景況感がわかります。
本記事で日銀短観とは何か理解し、投資判断に役立てましょう。
日銀短観とは
日銀短観(正式名称:全国企業短期経済観測調査)とは、日本銀行が景気の現状と先行きについて企業に直接アンケート調査を実施し、集計結果や分析結果から日本の経済を観測するものです。日本銀行では、「全国の企業動向を的確に把握し、金融政策の適切な運営に資すること」を発表の主な目的としています。
日銀短観について理解できるように、日本銀行の役割や発表時期・内容・調査方法などについて確認しておきましょう。
そもそも日本銀行の役割とは?
日本銀行は日本唯一の中央銀行で、「物価の安定」と「金融システムの安定」を図る役割を持ちます。日本銀行の主な業務は、以下のとおりです。
● 銀行券(お札)の発行・流通・管理
● 決済に関するサービスの提供
● 金融政策の運営
● 金融システムの安定に向けた取り組み
● 国の資金(国庫金)、国債、対政府取引に関する業務
● 国際業務(外国為替の売買、外国中央銀行などによる円貨資産の調達・運用への協力ほか)
日本銀行が担う業務のひとつ、「金融政策の運営」とは、金融市場における金利形成に影響を及ぼすことで、通貨や金融の調整を行うことです。例えば日本銀行では、日本の金融経済情勢を踏まえ、国債売買などの公開市場操作を通じて国内の資金供給量を調整することがあります。
日銀短観はいつ発表される?
日本銀行は、毎年3・6・9・12月に調査を実施し、原則として4月・7月・10月初旬と12月中旬に日銀短観の調査結果を公表しています。公表時刻は、午前8時50分です。また、公表される具体的な日にちは、あらかじめ6・12月末ごろに先行き12カ月間分が公表されています。
なお、公表内容は、日本銀行のホームページや日本銀行の本店情報ルーム(8:50~17:00)で確認可能です。
日銀短観の発表内容とは?
日銀短観で発表されるのは、主に日本企業の業績や状況、設備投資の状況、雇用などに関する調査結果です。大企業・中堅企業・中小企業や、製造業・非製造業に分類した調査結果が公表されるため、企業の規模に応じた業況を把握できます。
また、各企業が経済環境の現状や先行きをどうみているかを調査している点も、日銀短観の特徴です。
日銀短観の調査方法とは?
日銀短観は、所定の調査表による郵送およびオンライン調査で実施しています。金融機関を除く、全国の資本金2千万円以上の民間企業約21万社の中から毎回選定した1万社前後の企業が、調査の対象です。
対象企業に調査する項目は、「判断項目」(業況など10項目)「年度計画」(売上高など14項目)「四半期項目」(負債計・資産計など10項目)「新卒者採用状況(6・12月実施のみ)」(新卒採用者数について)の4種類です。
日銀短観はなぜ注目される?
調査対象となる企業数が多く、公表までの期間も短いため、企業経営者の景況感を示すリアルタイム性の高い指標であることが日銀短観が注目される主な理由です。日本国内だけでなく、海外からも注目度も高く、「TANKAN」の名称で知られています。
また、日本銀行が金融政策を決定する際の判断材料になる点が、株式市場や為替市場に影響を与えている理由といえるでしょう。
注目される指標のひとつが業況判断指数(DI)
数ある中で、特に注目される指標のひとつが日銀短観の業況判断指数(DI)です。業況判断指数(DI)をチェックすれば、経営者の景況感やその変化がわかります。
業況判断指数(DI)の算出方法や見方を確認していきましょう。
業況判断指数(DI)の算出方法
日銀短観の調査実施時に、回答企業は自社の収益を中心とした、業況についての全般的な判断を「1.良い」「2.さほど良くない」「3.悪い」のいずれかで回答しています。調査結果に基づき、「1.良い」と回答した社数構成比から、「3.悪い」の社数構成比を引いて算出したのが、業況判断指数(DI)です。
例えば「良い」と回答した企業の割合が33%で、「悪い」と回答した企業の割合が23%であれば、業況判断指数(DI)は10%ポイント(33%-23%)になります。
業況判断指数(DI)の見方
業況判断指数(DI)をチェックして結果がプラスであれば、業況が「良い」と考える企業の方が「悪い」と考える企業より多いです。一方、業況判断指数(DI)がマイナスであれば、業況が「悪い」と考えている企業の方が多いことを示しています。
2022年12月の日銀短観では、大企業製造業の業況判断指数(DI)の「最近(調査回答時点)の状況」が7%ポイントのため、「良い」と考える企業の方が多いです。ただし、2022年9月調査における「先行き(3ヶ月後まで)の状況」では9%ポイントと7%ポイントを超えていたため、2022年12月は予想されていたより景況感が悪かったことを示しています。
日銀短観で設備投資や企業の物価見通しもわかる
日銀短観を確認すれば、業況だけでなく、設備投資の動向や企業の物価見通しも把握できます。それぞれ確認していきましょう。
設備投資とは
設備投資とは、企業が自社の発展や業務継続のために必要な設備に投資することです。日銀短観では、大企業・中堅企業・中小企業の年間の設備投資額を、製造業と非製造業別に発表しています。
短期的に景気の拡大を支える側面、中長期的な成長力を高める側面があるため、日銀短観における設備投資は、景気動向に関連してしばしば注目される指標です。2022年12月発表の日銀短観によると、全規模全産業の2022年度設備投資額(計画)は、前年度比+15.1%と堅調な結果でした。
企業の物価見通しとは
日銀短観の企業の物価見通しとは、1年後、3年後、5年後の「販売価格の見通し」と「物価全般の見通し」について調査したものです。企業経営者が、将来予想される物価上昇率をどのように考えているかを示す指標として役立ちます。
2022年12月発表の日銀短観では、全規模全産業の販売価格の見通しは、1年後に3.2%、3年後3.8%、5年後4.3%でした。また、物価全般の見通しは、1年後2.7%、3年後2.2%、5年後2.0%でした。
日銀短観以外の主な報告・指標
日銀短観以外にも、国内で投資判断の参考になる報告や指標がいくつも存在します。代表例が以下の4つです。
● 日銀金融政策決定会合
● 景気動向指数
● 消費者物価指数
● 月例経済報告
それぞれの概要を解説します。
日銀金融政策決定会合
日銀金融政策決定会合とは、日本銀行が年に8回開催する、金融政策の運営に関する事項を審議・決定するための会合のことです。会合終了後に、決定内容のほか、「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」や「主な意見」、「議事要旨」などが公表されます。
日本銀行が決定する金融政策が、市場での予想や期待と乖離していないかなどが、発表で注目されるポイントです。
景気動向指数
景気動向指数とは、内閣府が、景気の現状把握および将来予測に資するために作成する指標です。景気動向指数には、景気の強弱を定量的に計測するCI(コンポジット・インデックス)と、景気の各経済分野への波及度合いを示すDI(ディフュージョン・インデックス)があります。
2022年12月発表の同年10月分CIの一致指数(主に景気の現状把握に使用される指数)は99.9(前年同月比-0.9)で、基調判断(移動平均をとることで月々の動きをならして、CI一致指数の動向について判断したもの)は「改善を示している」との結果でした。
消費者物価指数
消費者物価指数とは、全国の世帯が購入する各種の財・サービスの価格(消費者物価)の平均的な動きを測定したものです。経済活動が活発になり、需給がひっ迫すると上昇率が高まり、経済活動が停滞して需給が緩むと上昇率が低下する傾向があるため、経済政策を推進する際や賃金・家賃の改定などの判断材料として幅広く用いられています。
2022年10月分消費者物価指数(同年11月公表)の総合指数は、2020年を100として103.7(前年同月比+3.7%)でした。これは、2年前(2020年)と比べて、全ての商品を総合した物価が3.7%上昇していることを意味します。
月例経済報告
月例経済報告とは、日本政府が月次で景気について示した公式見解のことです。報告には、景気の現状・基調・先行きに関する政府の見解や個人消費に対する判断などが盛り込まれています。
2022年11月月例では、個人消費は「緩やかに持ち直している」、業況判断は「持ち直しの動きに足踏みがみられる」、雇用情勢は「持ち直している」とコメントしています。
参考:内閣府「統計表一覧:景気動向指数 結果 令和4(2022)年10月分速報」
参考:総務省統計局「2020年基準消費者物価指数 全国 2022年(令和4年)10月分(2022年11月18日公表)」
参考:内閣府「月例経済報告(月次)令和4年11月」
日銀短観に注目しながら投資しよう
日銀短観は、日本銀行が景気の現状と先行きについて企業に直接アンケート調査を実施し、集計結果や分析結果から日本の経済を観測するものです。調査対象となる企業数が多く、公表までの期間も短いため、企業経営者の景況感を示すリアルタイム性の高い指標として国内外から注目されています。
投資をはじめたら、年に4回発表される日銀短観及びその他に紹介した報告や指標もチェックしてみるといいでしょう。
参考:日本銀行「「短観」とは何ですか?」
参考:日本銀行「統計「短観(全国企業短期経済観測調査)」の解説」
参考:日本銀行「統計 短観」
ライター:Editor HB
監修者:鈴木 靖子(ファイナンシャルプランナー、AFP認定者)
監修者の経歴:銀行の財務企画や金融機関向けサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わる中、その経験を人々の生活に活かすためにFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。フリーランスがお金の知識を持つことの大切さを実感しており、フリーランス向けマネーブログを運営している。