世界の投資家が注目
なぜ「米国雇用統計」は重要指標なのか?
提供元:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
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米国雇用統計は、機関投資家のみならず個人投資家にとっても、投資をする上でとても重要度の高い経済指標です。その内容は、株や為替といった金融市場の動きに大きな影響を与えています。米国雇用統計は、なぜそこまで注目されるのでしょうか。その重要性や市場への影響について解説します。
米国雇用統計とは?何がわかる経済指標なのか
米国雇用統計とは、米国労働省が発表する雇用に関する月次データで、雇用サイドから見た米国の経済の状況が把握できます。
米国雇用統計では10数項目が発表されますが、特に注目される数字は「非農業部門雇用者数(NFP-Non Farm Payroll)」や「失業率」です。前者は、農業関連以外の産業で働く人の数や増減をまとめたデータです。後者は、米国内の失業者数を労働力人口(失業者数と就業者数の合計)で割った数値です。
原則、毎月第1金曜日に前月分の統計が発表されるので月次データとしての速報性があります。厳密には毎月12日を含む1週間を対象とし、約16万の企業や政府機関の中から約40万件のサンプルを調査・集計し発表します。発表時間は米国時間の朝8時半です。日本時間では、米国夏時間(サマータイム。3月第2日曜日から11月第1日曜日)の場合は夜21時半、それ以外の時期(冬時間)は夜22時半です。
米国雇用統計のデータがメディアに流れる前後に為替や株が大きく動くことが多く、世界中の投資家にとって重要なイベントになっています。動画などのライブ放送をしているメディアもあるほど、注目されているのです。
FRBが重視する経済統計
なぜ米国雇用統計は数ある経済指標の中でも特に注目度が高いのでしょうか。それは、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を決める上でとても重視している経済統計だからです。
FRBの役割として特に重要なのは、国民の雇用を最大化することと、物価を安定させることです。FRBが重視する米国雇用統計は、自国の金融政策の方向を左右するのです。米国の21年度の名目GDPは22兆9,961億ドル、世界全体の約24%の水準となります。米国の経済状況は世界市場に大きな影響を与えるため、米国雇用統計は世界の投資家がウォッチする重要イベントなのです。
米国雇用統計と金利や為替との関係
米国雇用統計は単にトレンドを見るのでなく、市場予想との対比で見ることが主流です。
経済調査機関が出した経済予想の平均値を「市場予想(コンセンサス)」といいます。米国雇用統計を見る場合、非農業部門雇用者数や失業率が市場予想に対して「ポジティブ・サプライズ(いい数字)」だったか「ネガティブ・サプライズ(悪い数字)」だったかによって、金融市場に与える影響が異なります。
非農業部門雇用者数は前月比の増減で表し、「前月比●万人増」というように発表されます。失業率は失業者数を労働力人口で割った比率で表し、「失業率●%」というように発表されます。
米国雇用統計の市場予想を基準とした景気の判断
雇用者数が市場予想を上回るときや、失業率が市場予想を下回るときは、景気が市場予想より良いことを意味します。一般的には消費が増えるので、企業の売り上げが伸びて業績が向上し、企業価値が高まることで株価は上がる可能性が高いでしょう。
景気が好転すると個人や企業の間で資金需要が増えるため、長期金利が上昇する傾向にあります。国家間での金利差が広がると、金利の低い国の通貨を売り、金利が高い国の通貨を買った方が多くの金利を得られるため、相対的に金利の高くなった(高金利の)ドルは買われやすくなります※。
雇用者数が市場予想を下回るときや失業率が予想を上回るときは、景気が市場の予想より悪いことを意味します。一般的には消費は後退するので、企業の売り上げが減って業績が低下し、企業価値が落ちることで株価が下がる可能性が高いでしょう。需要の減退、長期金利の低下により、ドルが売られやすくなる傾向があります。
※各通貨の信用リスクが同等程度である場合
米国雇用統計は、投資方針を決める大きな1つのヒントになります。特に、米国株をはじめとした国外の資産に分散投資する人なら、必ず確認しておくべき指標でしょう。
(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)