為替介入とは何かわかりやすく解説!これで効果や歴史もわかる

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為替介入とは、中央銀行が為替相場に影響を与えるために、外国為替市場で通貨間の売買をおこなうことです。日本でも、円安・円高是正のために実施されてきました。

本記事では、為替介入の概要だけでなく、メリットやデメリット、歴史についても詳しく解説しています。

為替介入とは

為替介入(正式名称:外国為替平衡操作)とは、通貨当局が為替相場に影響を与えるために外国為替市場で通貨間の売買を行うことです。通貨当局は通貨政策を担当する機関のことで、日本では財務省や日本銀行などが該当します。

ここでは、為替介入についてより詳しく理解するため、実施方法や目的を確認していきましょう。

為替介入の実施方法

日本では、財務大臣の権限で、日本銀行が介入を実施します。実施に至るまでの一般的な流れは以下のとおりです。

1.日本銀行が財務省に対して為替市場に関する情報を報告(毎日)
2.受け取った情報に基づき財務大臣が必要性を判断
3.2を日本銀行に連絡
4.日本銀行が為替相場の変動要因や、介入決定に役立つマーケット情報を財務省に提供
5.財務省の具体的な指示に従い、日本銀行が為替介入を実施

なお、日本銀行が財務大臣の代理人として海外の通貨当局に為替介入を委託することもあります。

為替介入の目的

急激な為替変動(円安・円高)を抑えて安定化させることや、相場を適正な水準に誘導することが、為替介入を実施する主な目的です。円安・円高は円の他通貨に対する相対的価値のことで、一般的に円1単位で交換できる他通貨の単位数が相対的に少ない場合に「円安」、相対的に多い場合に「円高」と呼びます。

外国為替や円安・円高について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

円安・円高って何?これを読めばよりニュースを理解できる

為替介入のメリット

為替介入実施で過度な円安・円高から脱却することで、政治・経済・家計などの安定を図れる点がメリットです。

過度な円安・円高の状態にあると、さまざまな分野に大きな影響を及ぼします。例えば、過度な円安のときは、一般的に輸入品価格が上昇し、家計にダメージを与えるでしょう。過度な円高のときは、日本の輸出企業の国際競争力が弱まる傾向にあります。

為替介入のデメリット

為替介入のデメリットは、主に以下の3点です。

1.諸外国への配慮が必要
2.できる範囲に限りがある
3.効果が限られるとの見方がある

ここでは、それぞれのデメリットを確認していきましょう。

デメリット1 諸外国への配慮が必要

諸外国に配慮した上で実施しなければならない点が為替介入のデメリットです。状況によって、為替介入に対して諸外国から批判やけん制がかかることもあります。

為替介入は主に米ドルに対して行われるため、とくに米国との関係を意識しなければなりません。米国の理解を得ずに強引に為替介入を進めると、日米関係に大きな影響を及ぼすでしょう。

2022年9月にドル売り円買いの為替介入を実施した際、米国財務省は日本に対して批判しませんでしたが、報告書内でけん制はしました。

デメリット2 できる範囲に限りがある

為替介入をできる範囲に限りがある点もデメリットです。通貨間の売買により為替介入するため、円やドルなどの十分な資金がなければ対応ができません。

急激な円安に対応する場合は「ドル売り・円買い介入」をするために、財務省所管の外国為替資金特別会計(外為特会)の保有するドル資金を売却して円を買い入れます。一方、急激な円高に対しては、政府短期証券を発行して調達した円資金を売却してドルを買い入れることが一般的です。

デメリット3 効果が限られるとの見方がある

為替介入で急激な為替変動を抑えて安定化させることを期待できる一方で、効果が限られるとの見方もある点がデメリットです。為替介入には資金が必要なため、何度も繰り返し実施することは難しいことが、効果が限定的な理由として挙げられます。

また、そもそも日本単独では為替介入しても長く続かない点もデメリットです。一般的に、効果的な為替介入には、欧米との協調も検討しなければなりません。

為替介入以外に為替相場に影響を与えるもの

円買い・円売りの為替介入以外にも、為替相場に影響を与える方法がいくつかあります。主な方法は、以下のとおりです。

・実質金利を調整する
・口先介入で心理的に操作する

それぞれ確認していきましょう。

実質金利を調整する

金融政策による実質金利の調整は、為替相場に影響を与える方法のひとつです。実質金利とは、金利から物価変動の影響を除いたもので、一般的に名目金利から期待インフレ率を差し引くことで算出できます。

円と海外通貨(主に米ドル)の実質金利差が拡大(縮小)すると、為替相場にも影響を与えることが一般的です。円・米ドルの関係では、米国金利の方が高い状況が続いており、理論上両者の金利幅が拡大すれば円安、縮小すれば円高に振れやすくなります。

口先介入で心理的に操作する

口先介入で市場参加者を心理的に操作した場合も、為替相場に影響を与えることがあります。口先介入とは、主に政府高官が円買い介入や円売り介入の実施を示唆することです。

政府高官が介入をほのめかしたり「為替水準が一定の方向に動くことを期待する」旨の発言をしたりすることによって市場参加者が動き出せば、実際に為替介入をせずとも過度な為替変動は落ち着く可能性があります。

為替介入の歴史を振り返ろう

為替介入は、これまでの日本の歴史上何度も実施されてきました。

過去の為替介入実施日や実績額は、財務省の「外国為替平衡操作実施状況」で確認できます。外国為替平衡操作実施状況とは、財務省が為替介入の実施日・介入額・売買通貨を一カ月ごと、四半期ごとにまとめて発表したものです。

今回は、過去の為替介入のうち、1998年・2001年・2003年・2011年・2022年の5つの概要を簡単に紹介します。

1998年の円安是正

1997年以降、日本では大手証券会社や銀行などの経営破綻が続き、金融危機が発生していました。そのため、1998年には急激なドル高・円安が進みます。日米の金利差が拡大していたことや同年に米株価が上昇局面にあったことも当時のドル高・円安の要因です。

そこで、政府と日本銀行は円安阻止に動くべく為替介入に踏み切りました。財務省の発表によると、1998年4月9日・10日の為替介入合計額は約2.8兆円です。

しかし、為替介入後も円安傾向が止まらず、同年夏に140円台に突入しました(介入前後は130円台)。

2001年の円高是正

2001年9月11日に発生した米国同時多発テロ事件以降、ドルが急速に売られて円高ドル安が進行しました。そこで、日米をはじめとする国々が協調して為替介入を実施します。

財務省の発表によると、2001年9月の円売り・ドル買い実績額は約3.1兆円です。為替介入の結果、年末には1ドル130円前後にまで円安になりました(実施前は1ドル110円台半ば)。

2003年の円高是正

2003年3月に勃発したイラク戦争以降、米国の「双子の赤字問題」を主な理由に急速に円高・ドル安が進行します。政府は為替介入に踏み切りますが、すぐに効果は出ませんでした。

財務省の発表によると、2003年5月から2004年3月にかけて、合計約32.8兆円もの円売り・ドル買いの為替介入が実施されています。

2011年の円高是正

2011年、東日本大震災により日本経済が落ち込んでいたにもかかわらず、円高圧力が強まっていました。その結果、2011年10月31日には、過去最大の円高(1ドル75円32銭)を記録しています。

その後、円高をけん制するため政府と日銀は覆面介入に踏み切りました。覆面介入とは、介入を公表せずに秘密裏に実施することです。

後に財務省の発表で、同年10月31日から11月4日までに合計約9.1兆円の介入を実施していたことが判明しています。

2022年の円安是正

2022年は円安・ドル高が加速していたため、同年9月に政府・日銀が約2.8兆円の規模で円買いの為替介入に踏み切りました。しかし、円安に歯止めはかからず、10月に円・米ドル相場は1ドル150円台という歴史的円安水準まで進みます。

同年10月21日・24日に政府・日銀は再度為替介入を実施しました。財務省の発表によると、介入実績額は約6.3兆円です。

2023年4月18日現在の相場は1ドル134円台のため、当時と比べると円高の状況にあります。

為替介入とは為替相場に影響を与えるための通貨売買

為替介入とは、為替当局が為替相場に影響を与えるために外国為替市場で通貨間の売買を行うことです。為替介入実施で過度な円安・円高の是正が期待できます。

ただし、諸外国への配慮が必要な点や、できる範囲に限りがある点がデメリットです。過去の為替介入の実施状況が気になる方は、財務省の「外国為替平衡操作実施状況」を確認してみましょう。

参考:日本銀行「為替介入(外国為替市場介入)とは何ですか? 誰が為替介入の実施を決定し、誰が為替介入を行うのですか?」
参考:財務省「統計表一覧(外国為替平衡操作の実施状況)」

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職

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