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2023年7月号「投資環境レポート」

新興国の金融政策動向とその地域差

提供元:野村アセットマネジメント

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野村アセットマネジメントでは、毎月、世界経済や金融市場の注目点を投資環境レポートとしてお届けしています。

7月の投資の視点は、「新興国の金融政策動向とその地域差」です。

<注目点>

●コロナ禍以降、高インフレを背景に、新興国の中央銀行は早期かつ急速に政策金利を引き上げてきた。2022年末頃からは据え置き姿勢に転じ、最近では利下げを模索する中銀も出てきている。

●ただし、コロナ禍からの行動制限緩和のタイミングの違いから、アジア地域は異なった動きをしている。インフレ率の上昇は抑制され、金融政策も引き締める必要がなかったために、足元の景気動向も良好である。

●こうした地域差は、今後の金融政策や通貨の動きにも大きく影響するため、新興国全体への理解と同時に、地域差への理解を深めることも重要になってくるだろう。

急ピッチな引き締めを行った新興国

コロナ禍以降の新興国は、行動制限緩和による需要の反発に加えて、世界的な供給制約や国際商品価格の上昇の影響を受けて、高インフレに見舞われた(図2参照)。特に、多くの新興国は、消費者物価指数に占める食品・エネルギーの割合が高く、先進国に比べて国際商品価格上昇の影響を受けやすかった。新興国の中央銀行は、こうした動きを受けて金融政策の引き締めを早期かつ急速に進めた。

先進国の金融引き締めも、新興国により大きな利上げを迫る要因となった。2022年以降、米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとする先進国中銀も大幅な利上げを進めてきた。

FRBの利上げ局面においては、新興国からの資本流出に対する懸念が高まりやすい。そのため、資本流出を抑え、通貨を安定させるためにも、新興国は自国の金融政策を引き締めて、金利差が拡大しないようにする必要が出てくる。こうした内外の環境を反映して、政策金利は過去と比較しても非常に高い水準まで引き上げられた(図3参照)。

金融引き締めが奏功し、利下げを模索

積極的な金融引き締めを背景に、新興国はマクロ環境の安定に成功しつつある。

第一に、新興国通貨は底堅く推移した。確かに、2022年央以降のFRBが利上げペースを加速させた局面では、対米ドルで多くの新興国通貨は減価した。しかし、FRBが歴史的にも急速かつ大幅な利上げを行った中でも、新興国通貨は大幅な減価は免れた。さらに、早期に積極的な金融引き締めを行った一部の新興国では、通貨は増価してさえいる。

第二に、インフレ率はピークアウトを始めた。早期かつ積極的な利上げは自国の需要を抑制し、インフレ圧力を低減させた。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻以降大きく上昇していた国際商品価格が下落に転じたことも、食品・エネルギーの影響を受けやすい新興国のディスインフレを後押ししている。

インフレと通貨の安定を背景に、新興国の中央銀行は利下げの機会をうかがい始めた。2022年の末頃からは、政策金利を据え置き、様子見姿勢に転じる新興国が増えてきた(図1参照)。高水準の政策金利を維持してきた国では、年後半の利下げを模索している。

例えば、チリでは6月の金融政策決定会合において、5名中2名の理事が0.5%ポイントの利下げを主張した。また、声明文では、近いうちに利下げプロセスを開始する可能性が示唆された。ブラジルでは、6月の金融政策決定会合の声明文において、再利上げの可能性を示唆する文言が削除された。

もっとも、新興国の中央銀行は早期の利下げに対して慎重な姿勢をとっている。インフレ率は大きく低下しているものの、その中心は食品とエネルギーであり、それらを除いたコア・インフレ率は低下しつつも依然として高めの水準にある。

さらに、FRBをはじめとする先進国中銀の利上げサイクルは終了しておらず、根強いインフレ懸念から政策金利の最終到達点が引き上がるリスクに直面している。新興国が実際に利下げを実施できるタイミングは、国内のコア・インフレの動向や先進国中銀の金融政策見通しに依然左右されるだろう。

2023年7月号「投資環境レポート」の続きは、こちらからご覧ください。

当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社の見解であり、事前の連絡無しに変更される事もあります。投資に関する決定は、お客様御自身の判断でなさるようにお願いいたします。

(提供元:野村アセットマネジメント)

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