新NISAで応援投資!
起死回生の大逆転を目指す日本企業を後押し
提供元:ちばぎん証券
止まっていた時計の針が動き始めたのでしょうか。
7月3日、日経平均は3万3753円33銭と1990年3月以来、約33年ぶりの高値を更新しました。
株価だけではなく、今年は年初から株式市場の周辺で「〇〇年ぶり」という出来事が相次いでいます。
「1月の消費者物価指数は生鮮食品を除く総合指数が前年同月比4.2%上昇。第2次石油危機の影響で物価が上がっていた1981年9月(4.2%)以来、41年4カ月ぶりの上昇率」
「今春の平均賃上げ率(日本経済新聞社の賃金動向調査)は3.89%。31年ぶりの高水準」
「4〜6月期の名目GDPは前期比年率12.0%増。コロナ禍の特殊な時期を除くと1990年4~6月期(13.1%増)以来、33年ぶりに高さに」
いずれも日本が長年のデフレを脱し、インフレの入口に立っていることを実感させるものと言えるでしょう。
東西冷戦の終結、中国の市場経済化などを背景に進展したグローバル化は世界経済に大きな恩恵をもたらしました。有力企業は安価な労働力や原料、エネルギーを容易に調達し、低コストで生産した製品を開かれた世界市場で販売して業績を伸ばすことができたのです。
ただ、残念ながらこうした好環境はもう望めません。米中対立の深刻化やロシアによるウクライナ侵攻を受け、経済的な合理性は最優先されるポイントではなくなりました。安全保障の観点がそれにとって代わり、SDGsの制約も一段と大きくなっています。企業にとって中長期的なコストの上昇は避けられず、否が応でも成長志向を強めざるを得ない状況となっています。
昨年10月、日本経済団体連合会(経団連)は、「産業技術立国への再挑戦 ~2030-2040年における産業とキー・テクノロジー~」を公表しました。その冒頭にはこんな記述があります。
各国がテクノロジーを梃子にした産業革新に鎬を削る中、わが国は「失われた30年」という長期的な低成長を経験。世界の勢力図が大きく変わる大転換期にある今、各国の後塵を拝してきたわが国は、これまでの反省を踏まえながら「産業技術立国」への起死回生をはかる最後のチャンスである。
その上で「デジタル」、「グリーン」、「バイオ」を戦略分野とし、これらを支える「先端素材・材料」を加えた4分野を重点的に振興すべき産業と位置付けています。強い危機意識の下、将来を見据えて日本企業の強みを活かす方向に舵を切れば、起死回生のチャンスをものにすることは決して不可能ではないはずです。
投資家にとっても、将来を見据え望ましい社会や暮らしを考えることは大変重要だと思います。
「こんなものが欲しい、あったらいいのに」という一人一人の欲求から、「大切な子供や孫の時代はこんな世の中になっていて欲しい」というように広く社会で共有される願いまで。思い描く未来は様々でしょうが、そんな未来の実現に貢献してくれる企業を「応援する」――、この気持ちこそが長期投資の原点と言えるのではないでしょうか。
来年から始まる新NISA(少額投資非課税制度)は、こうした長期投資の考えが日本に根付くきっかけになるかもしれません。NISAは、毎年一定金額の範囲内で購入した株式や投資信託などの金融商品から得られる利益が非課税になる制度。2014年に導入され、来年から現行制度を拡充した新NISAがスタートします。
ここでは制度そのものには触れませんが、今回の制度改正はFPの先生方から「神改正」の声が上がるほど。規模、期間、使い勝手、どれをとっても現行制度とは様変わりで、長期的な資産形成を目指す若い世代はもちろん、資産の目減りを抑えたいシニア世代にとっても「使える」との評価です。それぞれの将来設計に基づいて様々な使い方を工夫できる新NISAを活用し、未来を託せるテーマ、企業への投資を検討してみてはいかがでしょうか。
例を上げるとすれば、まず「デジタル」分野。
先に紹介した経団連のレポートでは、日本が優位性を発揮できる分野として「光・通信」技術が挙げられています。NTTはこの「光・通信」技術を活かし、従来のインターネットが抱える課題を一気に解決しようという「IOWN」構想を推進しています。
「IOWN」は半導体からネットワークまでの伝送を電気からすべて光に置き換える「オールフォトニクス・ネットワーク」を核に、消費電力を従来の100分の1に抑えるほか、伝送容量を125倍に伸ばし、遅延時間も200分の1に抑えることを目標に掲げています。実現すれば「1年間充電しなくてもいいスマートフォン」も可能とのこと。他にも自動運転や遠隔医療、レジャー、エンタメなど幅広い分野に大きな変革をもたらすと期待されています。
NECは2020年6月にNTTと光・通信技術を活用したICT製品の共同研究開発などを目的とした資本業務提携を結び、協業体制を強化しています。また、今年4月には「IOWN」が実現する世界を体験・共創する場として「Lab with IOWN」を開設。ここでは「IOWN」を活用してビジネスの拡大を目指すパートナーと様々な実証実験などを行い、来るべき実用化に備えています。
次に「グリーン」分野。
ここでは次世代の安定供給電源の柱として「核融合」発電に期待したいと思います。核融合発電は原子核同士を融合させてエネルギーを取り出す仕組み。太陽も核融合反応で膨大な熱を放出するため、核融合炉は「地上の太陽」とも呼ばれています。実用化は「まだまだ先」との見方が一般的でしたが、AIの発達も手伝い、関連技術は急速な進歩を遂げています。5月にはマイクロソフトが米スタートアップ企業と2028年から核融合電力を購入する契約を結んだことでも注目を集めました。
日本は国際プロジェクト「国際熱核融合実験炉(ITER)」に参画するなど、1990年代から国主導でプロジェクトを進めてきました。世界でもトップレベルの技術を持ち、材料開発では欧州とともに先行していると言われています。
5月には政府系ファンドに三菱商事、三井物産、日揮HD、三菱UFJ銀行などからなる16社が、京都大学発のスタートアップ「京都フュージョニアリング株式会社」に約100億円を出資しました。同社はイギリス政府主導の核融合炉開発プログラムで原型炉の概念設計を担当する企業に選ばれるなど世界でも注目される一社です。今後は官民挙げた日本連合をバックに、関連設備や技術者など経営資源を充実させ技術開発力を高めていく方針です。
2002年のノーベル物理学賞・小柴昌俊氏の研究に貢献したことで知られる浜松ホトニクス。
同社はレーザー核融合の実現の鍵となる高出力レーザー技術の開発と研究を行っていますが、今年1月には核融合燃料に照射するレーザー装置について実用化につながる研究成果を発表。技術力の高さを示しています。
「老後の資金2000万円問題」が大きな関心を集めるなど、人々の意識も「資産運用は不可欠」の方向に傾いています。そこに激変する国際情勢、インフレが意識される経済環境、成長産業にリスクマネーを供給したい政府の思惑、そしてそこから生まれた新NISAなどなど。様々な要因が重なって「貯蓄」から「投資」への資金の流れが生まれようとしています。こうした流れが定着した時、1989年の歴史的高値の更新へ、時計の針は進むのではないでしょうか。
(提供元:ちばぎん証券)