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2023年9月号「投資環境レポート」

米欧日の中央銀行は目標達成に向けて道半ば

提供元:野村アセットマネジメント

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野村アセットマネジメントでは、毎月、世界経済や金融市場の注目点を投資環境レポートとしてお届けしています。

9月の投資の視点は、「米欧日の中央銀行は目標達成に向けて道半ば」です。

<注目点>

●7月の政策変更を経て、米欧日の中央銀行が様子見姿勢を続ける可能性が高まっているが、3中銀の悲願である「2%物価目標」の達成に関しては未だ「道半ば」である。

●米欧中銀は、インフレ率が高水準にあることやディスインフレの要因が偏っていることから、インフレ圧力が沈静化するのかについて確信を強められずにいる。他方で日銀は、米欧とは対照的に、日本が低インフレ局面に逆戻りすることを懸念している。

●今後の注目点は、いずれの国・地域においても賃金である。米欧では労働需給の変化が賃金上昇圧力の鈍化に繋がるか、日本では来年以降も賃上げが続くかが、3中銀が「2%物価目標」の達成への確信を強められるかのカギを握ろう。

様子見フェーズに入った3中銀

7月に米連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)は追加利上げを、日本銀行はイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用柔軟化を各々決定した。決定の背景・目的は異なるものの、今後、3中銀が様子見姿勢を続ける可能性は高まっている。もっとも、3中銀の悲願である「2%物価目標」(以下、「目標」と略記)の達成に関しては、それに向けた進展は確認されるとはいえ、「達成に向けて道半ば」というのが現状である。以下では、3中銀の置かれた状況や今後の論点を整理したい。

米欧中銀は目標達成への進展に不満

FRBとECBは、7月に0.25%ポイントの利上げを決定した。しかし、従前と異なり、両中銀とも追加利上げへの明確な情報発信を控えた。6月には、FRBのパウエル議長は金利据え置きを決定するも「これは利上げ過程の継続だ」と述べ、ECBのラガルド総裁は利上げを決定した上で「次回も利上げするだろう」と指摘していたが、7月には両人の発言がトーンダウンしたのである。これまでの利上げの結果、金融政策が引締め的となったとみられる中、両中銀とも利上げ効果を見極める段階にあると認識しているのだろう。

同時に、両中銀は「目標」達成についての確信を強められずにいるとみられる。一見すると、米国は「目標」達成に向けて大きく進展している。7月のインフレ率(消費者物価指数ベース)は前年比+3.2%、食品・エネルギーを除くコアインフレ率は同+4.7%と高水準だったが(図1参照)、瞬間風速(季節調整値の前月比年率)は各々+2.0%、+1.9%と「目標」並みであった。

他方、景気は堅調である。4-6月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、内需を中心に前期比年率+2.1%(改定値)の高水準となった。貯蓄率がコロナ禍平均を下回ったままであることから、2020年・2021年に蓄積された「過剰貯蓄」が取り崩され、景気を下支えしている模様である(図2参照)。こうした中、景気が堅調を維持したままで「目標」が達成されるという、ソフトランディングへの期待が強まっている。

しかし、インフレ率鈍化は専ら食品・エネルギー物価や財物価に依るものであり、FRBが重視してきたサービス物価の伸びは高水準にある(図3参照)。労働市場の需給逼迫が、賃金上昇圧力ひいてはインフレ圧力となり続けているのであろう。FRBは、景気の堅調には安堵しつつも、「目標」達成への進展には満足していないと考えられる。

ユーロ圏の状況は、米国よりも厄介である。ユーロ圏の景気は軟調であり、4-6月期のユーロ圏実質GDP成長率は前期比年率+1.0%、振れの大きいアイルランドを除くと同+0.5%と低水準にとどまった(当社試算値)。7-9月期についても、企業マインドが下振れており、景気の軟調が続いている模様である。

背景には、中国景気の下振れの影響を受けやすいことや猛暑が観光業等を下押ししているとみられることが挙げられるが、加えて、「過剰貯蓄」の取り崩しによる下支え効果が限定的であることも指摘される(米国と異なり、ユーロ圏の貯蓄率はコロナ禍前の平均を上回ったままである、図2参照)。

もっとも、景気の軟調は物価動向には波及しておらず、7月のインフレ率は前年比+5.3%、コアインフレ率は同+5.5%と高水準となった(図1参照)。瞬間風速(季節調整値の前月比年率)をみても、各々+4.8%、+5.4%と「目標」から大きく上方乖離したままである。ECBは、想定を下回る景気の軟調を懸念すると同時に、「目標」達成への進展に満足していないと思われる。

2023年9月号「投資環境レポート」の続きは、こちらからご覧ください。

当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社の見解であり、事前の連絡無しに変更される事もあります。投資に関する決定は、お客様御自身の判断でなさるようにお願いいたします。

(提供元:野村アセットマネジメント)

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