「インデックスファンドでコツコツ積立」が基本!
家計再生コンサルタント直伝! 毎月3000円から始める「新しいNISA」
2024年から、これまでの制度と大きく変わる「新しいNISA」が始まる。非課税保有期間は無期限、非課税保有限度額も拡大して1800万円となるが、一生涯活用できると思うと、かえってどのように使えばいいかわからなくなりそうだ。
そこで、家計再生コンサルタントの横山光昭さんに、投資初心者にこそおすすめの「新しいNISA」活用法を教えてもらった。
無期限化&保有限度額拡大で“自分のペース”で使える制度に
「『新しいNISA』に変わることで、使い勝手が良くなると感じています。無期限化され、非課税保有限度額が大きくなることで、より個々に合った投資が可能になり、自然体で向き合える制度になるからです。これまでは5年または20年という期間が決まっていたので、年間投資枠を使い切らないともったいないと考えがちでしたが、今後は無期限となるので、自分のペースで投資しやすくなるでしょう」(横山さん・以下同)
これまでよりも非課税保有限度額や年間投資枠が大きくなるからこそできる活用法もあるが、“自分のペース”で進めることが重要になるという。
「年間投資枠の360万円を毎年使い切り、5年間で1800万円を埋めて、そのまま様子を見るという手法がSNSなどで話題になっています。早く大きく入れることで増えやすいという理論はありますが、自分の状況に合わせて進めることを、何よりも優先すべきです。収支を振り返り、毎月どのくらいの額を投資に回せるか、ライフプラン的にいつお金が必要になるのか、将来的にどのくらいの資産が必要になるのか、考えるところから始めましょう」
長い期間をかけて運用していくとすると、この先もずっと収支が一定とは考えづらい。収入が増えたり、子どもの教育費が発生したりと、変化が生じた際にも「状況を見ながら、無理のない範囲で続けることが大事」と、横山さんは話す。
「無理のない範囲で続けることを考えると、既に『つみたてNISA』を活用している人は、『つみたてNISA』で積み立てていた金額や商品から大きく逸脱させる必要はないと思います。年間投資枠が拡大するからといって、焦って大きな金額を入れようと思わずに、いままでどおりコツコツと積立を続けることを考えましょう」
投資経験がない人の場合、「NISA」に注目が集まっているいまこそ、始めるタイミングといえるかもしれない。
「投資を始めるタイミングは、株価が上がっている時期と下がっている時期、どちらがいいのかと迷うかもしれません。しかし、『新しいNISA』は基本的に長期での資産形成を目指すもので、長い目で見ると株価は上がったり下がったりするものなので、どっちが先でも後でも問題ないといえます。『新しいNISA』は投資を考えるいいきっかけになるため、タイミングよりも、現状の収支と投資に回せる金額を考えるところから始めましょう」
まずは「月々3000円」で投資の仕組みと面白さを体感
投資未経験の場合、まずは「毎月3000円」からの積立投資がおすすめとのこと。
「なぜ3000円かというと、初めて投資をする方でもあまり怖さを感じずに投資に回せる金額であり、投資の面白さがギリギリ体感できる金額だからです。月々3000円だと、1年続けても3万6000円にしかならないと思いますが、最初に積むべきは金額よりも経験です。少額でも経験することで、投資の仕組みやお金が増える理由を体感できると思います」
まずは3000円で始め、毎月の積立や投資そのものに慣れ、お金にも余裕があるようであれば、5000円、1万円、3万円と増やしていけばいい。
「3000円で慣れるという期間を持てるのも、非課税保有期間が無期限になるからこそ。期限がないので、『年間投資枠を使い切らなきゃ』と考える必要がなく、準備期間を設けることができます。毎月一定額を積み立てるというサイクルができてくると、無理なく積立投資を続けられるようになるでしょう」
「新しいNISA」では、上場株式やETF(上場投資信託)を購入できる成長投資枠も設けられるが、基本的にはつみたて投資枠を利用した積立投資で問題ないそう。
「あわてずに積立投資をベースにしましょう。無期限化することも踏まえると、積立投資を長く続けるほうが、リーマンショックやコロナショックのような『○○ショック』のときでも回復しやすく、複利効果も得られるといえます。始める段階で金融機関選びや口座開設というハードルはありますが、投資する商品を選ぶところまで来れば、あとは毎月お金を入れるだけで続けられるので、最初だけ頑張りましょう」
未経験者のNISA活用のカギは「株式型インデックスファンド」
「NISA」を活用するにあたっては、運用する商品を自分で選ぶ必要がある。どのような商品を選択するといいだろうか。
「投資未経験であれば、基本的には『投資信託で積立投資』という手法で進めましょう。投資信託のなかでも、株価指数などの指数に連動する運用を目指すインデックスファンドを使うことで、自分の意志や希望に沿った運用を行いやすくなると考えられます」
投資信託とは、株式や債券などの複数の銘柄をまとめたパッケージ商品のようなもの。投資家から集めたお金をひとつの資金としてまとめて投資・運用するため、少額からでも購入できるという特徴がある。
「投資信託にはさまざまな種類がありますが、基本的には株式で構成されたものでいいと思います。『NISA』は利益が非課税になる制度なので、利益を得られる可能性が高いもので運用したほうがメリットが大きくなるからです。特に若いうちは株式型の投資信託でいいでしょう。始めた時期にもよりますが、年齢が上がってきたら、債券型を買うという選択肢もあるでしょう」
押さえておくといい投資信託の種類についても、具体的に教えてもらった。
「次の3種類の投資信託を押さえることをおすすめします。(1)全世界株式インデックスファンド、(2)全米株式インデックスファンド、(3)新興国株式インデックスファンドの3つです。このなかでリスクとリターンの幅が小さいのは全世界株式、大きいのは全米株式、さらに大きいのが新興国株式といった傾向があります」
複数の投資信託を運用するということは、保有する割合も重要になってくるが、どのように考えていくといいだろうか。
「バランスの考え方がわからない場合は、全世界株式だけでも問題ありません。さまざまな国や業種の株式に分散して投資する商品なので、リスクは比較的低いといえます。毎月3000円積立の期間も、運用するのは全世界株式だけでいいでしょう。月々の積立額を増やしたり、より自分のオリジナリティを出した投資がしたいと思ったりした場合は、半分を全世界株式、残りの半分を全米株式や新興国株式を組み合わせたものにしてみましょう。全米株式や新興国株式の市況をチェックしながら、全世界株式インデックスファンドのポートフォリオを参考にすると、割合を考えやすくなります」
一度運用を開始した投資信託は、「売り買いせずにそのまま持ち続けるのがコツ」だという。
「なぜかというと、成果は1年程度では判断できないからです。『今年の成果が悪いから、別の投資信託に変えよう』と売ったり買ったりしてしまうと、得られるはずだった成果を逃しかねません。積立投資は10年後、20年後、30年後を見据えて行うもので、長い期間をかけてこそ成果が出るといえます。1回運用を始めたら短期間で売らず、じっと我慢することで、成果を感じられるようになるでしょう」
無期限化されるからこそ、まずは少額でスタートし、徐々に慣れてきたら積立額を増やすといった手法が取りやすい「新しいNISA」。いまこそ活用を考え始めるときかもしれない。
(取材・文/有竹亮介(verb) 撮影/森カズシゲ)
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