金融商品取引法とは?目的や禁止行為をわかりやすく解説

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金融商品取引法(金商法)とは、金融商品取引における投資者保護ルールの徹底や利便性の向上などを目的とした法整備を進めるため、2007年に設立した法律を指します。

主な規制対象は、有価証券取引やデリバティブ取引です。本記事で、金融商品取引法とはどのような法律なのかを説明した上で、具体的な禁止行為についてわかりやすく解説します。

金融商品取引法(金商法)とは

金融商品取引法とは、証券取引に関する基本的な事項を定めた証券取引法を改正し、2007年9月に施行した法律のことです。略して金商法と呼ばれることもあります。

金融商品取引法は、金融業界などにおいて大切な法律のひとつです。ここから、金融商品取引法の目的や特徴、改正の主な内容について解説します。

金融商品取引法の目的

金融商品取引法制定のきっかけは、2006年6月に証券取引法の改正や法整備に関する法案が可決・成立したことです。法整備の主な目的として、以下が挙げられます。

・金融・資本市場をとりまく環境変化への対応
・利用者保護ルールの徹底
・利用者利便性の向上
・「貯蓄から投資」に向けた市場機能の確保、金融・資本市場の国際化への対応

法整備を進める中で、横断化(縦割り規制から横断的な規制にすること)や柔軟化(一律規制から差異のある規制にすること)を目的として、金融商品取引法が誕生しました。

金融商品取引法の特徴

金融商品取引法の主な特徴は、以下のとおりです。

・規制対象の商品を拡大
・規制対象業務を横断的に規制
・参入規制を柔軟化(業務内容によって規制が異なる)
・業者が遵守しなければならない行為規制を整備
・顧客の属性に応じて行為規制を柔軟化(特定投資家制度の設立)

なお、金融商品取引法の誕生に伴い、以下の4法律が廃止になりました。

・金融先物取引法
・外国証券業者に関する法律
・有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律
・抵当証券業の規制等に関する法律

また、全89の法律が改正されています(一部が金融商品取引法に統合)。

金融商品取引法改正の内容

2007年に誕生してから、金融商品取引法は定期的に改正されています。

たとえば、2023年11月の金融商品取引法改正に伴い、2024年4月以降上場企業などが四半期報告書を提出する必要がなくなりました。四半期報告書とは、対象企業が四半期(3カ月)ごとに年3回、企業情報や事業状況などをまとめて作成しなければならなかった書類のことです。

また、2024年5月にも金融商品取引法の改正案が可決されました。資産運用立国の実現に向けて参入障壁を緩和することなどが、改正の主な目的です。

金融商品取引法の規制対象

金融商品取引法の規制対象となるのは、主に金融商品です。金融商品の具体例として、以下が挙げられます。

・有価証券
・デリバティブ取引

それぞれの特徴について、確認していきましょう。

有価証券

有価証券とは、証券市場で売買できる対象として、金融商品取引法で規定されている証券のことです。金融商品取引法第2条第1項第1〜21号で、具体例が挙げられています。

主な有価証券は、以下のとおりです。

・国債
・地方債
・社債
・株券・新株予約権証券
・投資信託
・抵当証券
など

また、同条第2項では、信託受益権や合同会社の社員権などをみなし有価証券とすることが規定されています。みなし有価証券とは、証書に表示されていなくても、投資者保護の必要がある権利のことです。

デリバティブ取引

デリバティブ取引とは、株式や債券などの原資産から派生した取引のことです。金融商品取引法第2条第20項では、デリバティブ取引を以下の3つに分類しています。

・市場デリバティブ取引(金融商品市場で市場開設者の基準・方法に従う取引)
・店頭デリバティブ取引(金融商品市場や外国金融商品市場を通さない取引)
・外国市場デリバティブ取引(外国金融商品市場で、市場デリバティブ取引に類似する取引)

デリバティブ取引の具体例は、先物取引やオプション取引などです。

先物取引とは、将来の決められた期日に、取引時に決めた価格で、特定の商品を売買することです。先物取引について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

先物取引とはどんな取引?特徴やメリットから理解しよう

一方、オプション取引とは、将来の決められた期日にあらかじめ決められた価格で、対象商品を「買う権利」や「売る権利」を売買することです。オプション取引について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

オプション取引とはどんな取引?先物取引との違いも解説

法律で規制される金融商品取引業者とは

金融商品取引法で規定されている金融商品取引業者とは、金融商品を取り扱うすべての業者のことです。また、内閣総理大臣(金融庁)に申請・登録した金融商品取引業者以外が、金融商品取引業を行うことは禁じられています。

金融商品取引業者の種類は、以下のとおりです。

・第一種金融商品取引業(第28条第1項):有価証券売買・店頭デリバティブ取引・有価証券管理業務など
・第二種金融商品取引業(同条第2項):みなし有価証券の売買・市場デリバティブ取引など
・投資助言・代理業(同条第3項):投資顧問契約に基づく助言など
・投資運用業(同条第4項):投資信託の運用・投資一任契約に基づく運用など

第一種金融商品取引業は主に証券会社、第二種金融商品取引業はファンドなどが営んでいます。また、投資運用業や投資助言・代理業を、投資顧問業者などが営むことが一般的です。

金融商品取引法の主な規制内容・禁止行為

金融商品取引法で規制されている内容や禁止行為は、主に以下のとおりです。

・不公正取引(インサイダー取引等)の規制
・販売・勧誘に関する規制
・上場会社の開示義務

それぞれの内容や具体例を紹介します。

不公正取引(インサイダー取引等)の規制

金融商品取引法では、一般の投資家に不測の損害をもたらす行為を不公正取引として規制しています。不公正取引の具体例は、以下のとおりです。

・風説の流布など(第158条):相場を変動させるために風説を流布して偽計を用いたり、暴行・脅迫をする行為
・相場操縦的行為(第159条):他人に誤解を生じさせることなどを目的に取引する行為
・インサイダー取引(第166条・167条):未公表の重要事実を知った上で株式を売買する行為

不公正取引を行うと、罰則が課されます。

販売・勧誘に関する規制

金融商品取引業者の販売・勧誘に対して、金融商品取引法でさまざまな規制が設けられています。

たとえば、金融商品取引業者は契約の締結にあたって、商品の仕組み・コスト・リスクなどがわかるように記載した書面を交付しなければなりません。また、取引によって生じた損失を補てんすることも禁じられています。

さらに、勧誘する上で重要なのが「適合性の原則」です。金融商品取引業者は、知識や経験・財産の状況などを考慮した上で、その人にあった商品を販売・勧誘しなければなりません。

上場会社の開示義務

金融商品取引法では、上場会社に対して書類の開示義務(ディスクロージャー制度)も定めています。開示が義務付けられているのは、主に以下のとおりです。

・有価証券報告書
・半期報告書
・臨時報告書
・確認書
・自己株券買付状況報告書
・親会社等状況報告書
・有価証券届出書
・有価証券通知書

有価証券報告書に記載されていることや、確認方法を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

有価証券報告書とは法律で提出が義務づけられた書類!従業員の平均年収の確認も可能

金融商品取引法に違反した場合の主な罰則

金融商品取引法に違反した場合、罰則があります。主な罰則は、以下のとおりです。

・刑事罰
・業務改善命令
・課徴金納付命令

それぞれの内容を紹介します。

刑事罰

刑事罰とは、罪を犯した者に対して刑事裁判で課されるペナルティのことです。金融商品取引法で規定する行為をした場合、刑事罰が課されることはあります。

刑事罰の対象となりうる主な行為は、以下のとおりです。

・無登録での金融商品取引業
・損失補てん
・インサイダー取引
・風説の流布
・相場操縦行為

たとえば、無登録で金融商品取引業を営んだ場合、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金を課される可能性があります(金融商品取引法第197条の2第10号の4)。

なお、インサイダー取引や風説の流布のように、金融商品取引業者だけでなく投資をしている個人にも刑事罰が課されるケースがあるため、注意しましょう。

業務改善命令

業務改善命令とは、監督官庁が利用者保護の観点で問題ありと判断した企業の行為に対して下す行政処分のことです。金融庁は、公益や投資者保護の観点で必要かつ適当と判断した場合に、金融商品取引業者や登録金融機関に対して業務改善命令を出すことがあります(金融商品取引法第51条)。

なお、業務停止命令や登録の取り消しは、より悪質な行為に対して下される命令のことです(同法第52条)。

課徴金納付命令

課徴金納付命令とは、金融商品取引法の違反者に対して金銭的負担を課す命令です。罰金は刑事罰であるのに対し、課徴金は行政上の制裁金である点が異なります。

たとえば、虚偽記載のある発行開示書類を提出した場合、原則として募集・売り出し総額の2.25%(株券などの場合は4.5%)の課徴金を支払わなければなりません。

金融商品取引法とは投資者保護などを目的とする法律

金融商品取引法とは、2007年に証券取引法を改正して新たに誕生した法律を指します。投資者保護の観点から規制対象の商品を拡大したり、業者が遵守すべき行為規制を整備したりした点が主な特徴です。

金融商品取引法に違反した場合、刑事罰が課されることはあります。インサイダー取引や風説の流布など、金融商品取引業者だけでなく、株式の購入者が規制の対象になるケースもあるため、違反しないよう金融商品取引法を十分に理解しておきましょう。

参考:金融庁「金融商品取引法について」
参考:e-Gov「金融商品取引法」
参考:知るぽると「はやわかり金融商品取引法&金融商品販売法 法律の概要」
参考:財務省 関東財務局「金融商品取引法制について」

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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