株式資産保有の必要性を検証
提供元:野村證券(FINTOS!編集部)
経済構造の変化に伴う、お金と資産の常識の変化の背景について考えます。1970年以降の日本経済のこれまでの歩みを代表的な4つの指標から見てみましょう。指標は、金融・保険業を除く全産業の税引き前当期純利益、配当金総額、一人当たりの人件費、日経平均株価を示しています。
人件費・企業利益・日経平均株価・配当金の推移
戦後からの昭和時代は、経済規模の拡大とともに企業業績は拡大、利益の増加に伴い株価も上昇、また、人件費、すなわち給与所得も大きく伸びていました。
1990年代に入る頃から経済は大きく変調し、10年ほど方向性を探る模索の時期が続きましたが、2000年以降は、人件費は横ばいながらも企業利益は底打ちから大きく拡大へ転じ、連れて株価も上昇していきます。配当金は、それまでの安定配当政策から増配傾向へと大きく転じたことがわかります。
株価は経済を映す鏡だとも言われますが、株式市場の動きが経済全体の動きに近い動きをする背景について、ここでは法人企業全体の売上げ・利益と、そのうち上場企業が占める割合の関係を見てみましょう。
日本の法人全体に占める東証上場企業の位置づけ
令和5年度版の財務省法人企業統計によれば、法人数は金融・保険業を除く営利法人数として約299万社存在し、売上高合計は約1,633兆円、経常利益は約107兆円です。一方、東京証券取引所の上場企業数は、金融・保険業と新規上場を除いて3,500社、売上高合計は約908兆円、経常利益は約73兆円です。
法人数全体に占める東証上場企業数の割合は約0.1%ですが、売上高と経常利益のそれぞれに占める割合は、売上高は55.6%と半分以上、経常利益は68.4%と7割弱となります。この観点からは、数にすればほんのわずかな上場企業の業績動向が、株価を通じて経済全体の動きを、かなりの程度反映していると言えます。
取引所を通じて誰でも株式を保有できますが、個別の株式に限らずに、例えば東証株価指数に連動するような金融商品を保有することで、間接的に株式市場全体ひいては経済全体の動きを捉えることができることにもなります。
このように、低金利下が続く中での物価上昇、賃金が伸び悩む中での株価の上昇や配当金の増加などがあることを踏まえますと、資産形成に取り組む際に、株式資産の保有を検討する必要性があることを示唆していると思われます。