為替レートとは?どのように決まるかわかりやすく解説
為替レートとは、円・米ドルのように異なる通貨を交換する際の比率を指します。どのように決まるのかを示した主な考え方が、金利平価説と購買力平価説です。
本記事では、為替レートとは何かを詳しく説明した上で、金利平価説と購買力平価説がどのような理論なのかも解説します。
為替レートとは
為替レート(為替相場)とは、外国為替市場において異なる通貨が交換される際の比率のことです。ここから、外国為替市場の仕組みや為替レートが与える影響などについて解説します。
外国為替市場の仕組み
外国為替市場とは、「円・米ドル」「円・ユーロ」のように、異なる通貨を交換する場のことです。外国為替市場が存在する意義として、外貨建て資産を売買して円と交換したり、海外の事業者との取引にあたって代金を決済するための外貨を調達したりできることが挙げられます。
外国為替市場における取引は、以下2つの取引に分類可能です。
・対顧客取引
・インターバンク取引
対顧客取引とは、金融機関が個人や企業と行う取引のことです。それに対し、インターバンク取引は、金融機関が直接もしくは外為ブローカーを通じて別の金融機関と行う取引を指します。
なお、外国為替市場には、株式市場における「証券取引所」のような取引所は存在しません。証券取引所について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
世界の証券取引所をわかりやすく解説!時価総額の高い取引所も紹介
為替レートの表記
為替レートは、「1ドル = 150円30銭」のように表記します(円・ドルの組み合わせの場合)。ただし、ニュースなどで報じられるのは基本的にインターバンク取引の為替レートのため、実際に銀行窓口で円をドルに交換する際(対顧客取引)の相場とは差がある点に注意が必要です。
また、対顧客取引においても、TTBとTTSで為替レートが異なります。日本では、TTBが外貨から円に交換する(例:米ドルを円と交換する)際のレート、TTSが円を外貨に交換する(例:円を米ドルに換える)際のレートです。
さらに、為替レートで通貨の種類を示す際には、3文字のアルファベットで省略することがあります。主な通貨とその省略表記は、以下の通りです。
・米ドル:USD
・ユーロ:EUR
・英ポンド:GBP
・スイスフラン:CHF
・オーストラリアドル:AUD
なお、日本円はJPYと表記します。
為替レートの影響(円安・円高になるとどうなる?)
為替レートが変動すると、企業の業績や物価など各方面に影響が生じることがあります。各種報道で、「円高」や「円安」が家計や経済に影響を与えていることを耳にしたことがあるでしょう。
例えば、為替レートが「1ドル = 100円」の状態から「1ドル = 110円」に変動することを「円安」と呼びます。それに対し、「1ドル = 100円」の状態から「1ドル = 90円」に変動するのが「円高」です。
円安や円高になることの影響については、以下の記事を参考にしてください。
為替レートの決まり方
為替レートは、対象通貨の需要によって決まります。需要が低くなるとその通貨の価値が下落し、需要が高くなればその通貨の価値が上昇することが原則です。
円と米ドルの関係で考えてみましょう。例えば、「1ドル = 100円」の状態から円を欲しがる人が増えれば(米ドルを欲しがる人が減れば)、「1ドル = 90円」のように円の価値が上がる(円高になる)可能性があります。それに対して、円を欲しがる人が減れば(米ドルを欲しがる人が増えれば)「1ドル = 110円」のように円の価値が下がる(円安になる)可能性があります。
為替レートが変動する要因はさまざまで、予測するのは困難です。その中で、為替レートがどのように決まるかを示した代表的な理論として、金利平価説や購買力平価説があります。
ここから、それぞれの概要を確認していきましょう。
金利平価説とは
金利平価説とは、自国の通貨と外国の通貨の名目金利の差によって、短期的な為替レートが決まると考える理論を指します。金利平価説を用いる主な目的は、為替市場における短期的な為替変動を分析することです。
ここから、金利平価説が着目することや具体例について解説します。
金利平価説が主に着目すること
金利平価説が主に着目するのは、各国の「金利」です。
政策金利の値は、国によって異なります。1%を下回ることもあれば、10%前後に設定されていることもあるでしょう。
金利平価説においては、金利の異なる通貨を持っていたとしても収益率はどちらも最終的に同じ地点に落ち着きます。なぜなら、自国金利と外国の金利の差に応じて為替レートも変動すると考えるためです。
金利平価説の具体例
「1ドル = 150円」で、金利平価説が成り立つ状況を考えてみましょう。
金利年0.5%の円資産と、金利年4%の米国資産にそれぞれ150万円ずつ投資すると仮定します。為替レートに変動がなければ、円資産は1年後に150万7,500円まで増えるでしょう(150万円 × 1.005)。
一方、米国資産(1万ドル)は1年後に1万400ドルまで増えます(1万ドル × 1.04)。円換算すると156万円に相当するため、この場合は米国資産に投資した方が大きな収益が出るでしょう。
しかし、金利平価説では、最終的なリターンは等しくなると考えます。仮に1年後の為替レートが「1ドル = 145円」に変動していれば、米国に投資した資産は150万8,000円程度(1万400ドル × 145円)です。そのため、金利が高い資産に投資していても、為替レートの変動により収益に大きな差は生じません。
購買力平価説とは
購買力平価説とは、各国の商品やサービスを買うことのできる力や、物価水準次第で為替レートが決まると考える理論を指します。この理論を用いる主な目的は、為替市場や国際貿易において、長期的な為替変動を分析することです。
購買力平価説が着目することや具体例について詳しく解説します。
購買力平価説が主に着目すること
購買力平価説で着目するのは「購買力」や「物価」です。その中でも、物価自体に焦点をあてる「絶対的購買力平価説」と、物価上昇率に注目する「相対的購買力平価説」があります。
絶対的購買力平価説とは、異なる通貨でも同じ商品であれば同じ値で購入できるという考え方です。絶対的購買力平価説に用いられる指標の代表例として、ビッグマック指数が挙げられます。ビッグマック指数については、以下の記事を参考にしてください。
ビッグマック指数とは?最新の日本の順位や世界各国の数値を紹介
一方、相対的購買力平価説とは、為替レートが双方の物価上昇率の比で決まるという考え方です。日本の物価上昇率が相手国よりも低ければ円の価値が上昇(円高)、高ければ円の価値が下落(円安)することになります。
購買力平価説の具体例
絶対的購買力平価説では、仮に日本ではオレンジジュースが1本150円、米国では1本1ドルの場合、「1ドル = 150円」になる点が特徴です。また、日本でオレンジジュースの値段が1本120円(0.8ドル相当)に下がるとアメリカ人にとって割安のため、絶対的購買力平価説に基づくと為替レートが「1ドル = 120円」にまで向かうことになります。
一方、相対的購買力平価説の計算式は、以下の通りです。
・相対的購買力平価 =基準の為替レート × (自国の物価上昇率 ÷ 相手国の物価上昇率)
仮に為替レートが「1ドル = 150円」の状態で、日本の物価上昇率が2%、米国が3%であれば、相対的購買力平価説に基づくと「1ドル = 約148.5円{150円 ×(1.02 ÷ 1.03)}」に向かうことになります。
為替レート・為替相場の推移
円・米ドルの関係における、為替レート(為替相場)の推移を簡単に紹介します。
第二次世界大戦後、日本は固定相場制を採用していました。その際の為替レートは「1ドル = 360円」です。
その後「1ドル = 308円」の固定相場制(スミソニアン体制)を経て、日本は変動相場制へと移行していきます。完全変動相場制への移行後は、基本的に円の価値が上昇していきました。
2011年10月31日には、「1ドル =75円32銭」まで円高が進みます。過去最大の円高を記録してからは円安傾向で、2024年6月下旬から7月上旬にかけては、1986年12月以来約38年ぶりに1ドル = 160円台に突入していました。
為替レートを決める主な理論は金利平価説と購買力平価説
為替レートとは、外国為替市場において異なる通貨が交換される際の比率のことです。為替レートを決める主な理論として、金利平価説と購買力平価説があります。
金利平価説は「金利」に注目するのに対し、購買力平価説は「物価」などに注目する点が特徴です。また、購買力平価説は「物価」自体に注目する絶対的購買力平価説と、物価上昇率に注目する相対的購買力平価説に分類できます。
今後、ニュースを見る際は、為替レートがどのように動いているかに注目してみてはいかがでしょうか。
参考:日本銀行「為替相場(為替レート)とは何ですか?」
参考:日本銀行「外国為替市場とは何ですか?」
ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。