TOPIXに詳しくなる(1)

【JPX総研】銘柄が同じでも結果は変わる?! 日経平均株価とTOPIXの算出方法の違いを簡単解説

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株価指数は、複数の銘柄の値動きを1つにまとめて数値化したもので、株式市場全体や特定の銘柄グループの動向を表す指標として使われております。

日本の株式市場の動向を表す株価指数としては、日経平均株価やTOPIXが良く知られていますが、「ニュースなどで見聞きすることはあっても、詳しくは知らない。」という方も多いのではないでしょうか。

本連載では、JPX総研が算出するTOPIX(東証株価指数、TOkyo Stock Price IndeX)について、詳しくご紹介してまいります。

初回となる今回は、指数の算出方法を中心に、TOPIXの特徴や日経平均株価との違いについてご紹介します。

1.TOPIXとは

TOPIXは、日本株の市場の動向(市場平均)を示す指標であることから、「市場の体温計」などとも言われておりますが、主に3つの役割を担っております。

【TOPIXの3つの役割】

一つ目は、「日本経済の動向を示す統計指標」で、日本の株式市場の動向を表すTOPIXは、内閣府が公表する景気動向指数の先行指標にも採用されております。

TOPIXは、日本の株式市場のおよそ98%の時価総額を占める銘柄を対象としているため、日本の株式市場全体の動きを表すのに的確な指標だと考えられています。

二つ目は、「運用評価のためのベンチマーク」です。

自分が投資している投資信託などのアクティブファンドの運用評価の際に一番気になるのは、「投資開始時と比べて何%上がったか、下がったか」かもしれませんが、これだけではその要因が相場によるものか、ファンド・マネージャーの腕によるものか、判断することができません。

そこで重要となるのが市場平均を表すベンチマークで、このベンチマークを上回る運用成績の場合には、ファンド・マネージャーの腕がよかったと言えることになります。このベンチマークは、ファンドによって異なり、中にはベンチマークを設けていないものもありますが、日本株ファンドの運用報告書などをご覧いただくと、多くのファンドで「ベンチマークはTOPIX」という記載が見られると思います。このようにファンド・マネージャーが市場平均に勝てたのかどうか、どの程度勝てたのかなどを測るベンチマークとして、TOPIXはアクティブ投資などの評価指標に使われております。

そして、三つ目は、「投資理論に基づく投資対象」としての活用です。パッシブ運用やインデックス投資と呼ばれるもので、現在では機関投資家だけでなく、ETFや投資信託を通じて、個人投資家にも広がりを見せております。

このような3つの役割を踏まえて、JPX総研ではTOPIXを「日本の株式市場を広範に網羅するとともに、投資対象としての機能性を有するマーケット・ベンチマーク」をコンセプトとするフラッグシップ指数として位置づけております。

2.TOPIXの算出方法

株価指数というと、指数の計算の対象となっている銘柄(「構成銘柄」といいます。)にどのような銘柄が含まれるかということに関心をお持ちになることが多いと思いますが、実は同じ構成銘柄の指数であっても、指数の算出方法によって算出結果は異なるものとなります。主要な株価指数のタイプとして、「株価平均型」と「時価総額加重型」との2つがあります。

「株価平均型」の株価指数は、構成銘柄の個々の株価を足しあわせ、それを一定の数で割ることで、いわゆる「平均株価」として計算されるものです。ごく単純化したイメージとしては、構成銘柄の株を1株ずつ保有したときに、全体としてどのような動きとなるかを示す算出方式となります。日経平均株価は、この計算方法を採用しています。

仮に、下の図のように銘柄Aと銘柄Bの2銘柄で指数を作った場合、「時点1」の株価の平均である18,800円((2600+35,000)/2)と「時点2」の株価の平均である26,300円(ケース1の場合。(2600+50,000)/2)を指数値として比較することとなります。

株価平均型は、市場の株価の平均を表すため、指数の単位が円やドルといった通貨で表されることも特徴の一つです。

これに対し、「時価総額加重型」の株価指数は、構成銘柄の時価総額(株価×上場株式数)の合計額を、ある一定時点の時価総額の合計額で割ることによって時価総額の増減を表すものです。こちらは、イメージとしては、構成銘柄である企業そのものを保有したときに、その企業群が全体としてどのような動きとなるかを示す算出方式となります。

下図では、市場には銘柄Aと銘柄Bの2銘柄だけということになりますので、その時価総額の合計が市場規模となります。時点1を始点とすると、その時点の時価総額が基準となりますので時点1の指数値は1.00pt(52.1兆円/52.1兆円)、時点2の指数は1.09pt(ケース1の場合。56.6兆円/52.1兆円)となります。

時価総額加重型は、基準となる日から時価総額がどれだけ変動したのかを表しているため、指数値の単位はpt(ポイント)で表されます。

なお、TOPIXは基準日(下図の時点1に相当)である1968年1月4日の指数値を100ptとしたときに、現在の時価総額がどういった水準にあるのかを表しております。

【「株価平均型」と「時価総額加重型」の単純なイメージ】

このように構成銘柄は一緒でも指数のパフォーマンスは算出方法によって違いが生じることになります。(上図(ケース1)では、株価平均型は+40%、時価総額加重型は+9%)

ここで、ケース1とケース2を比べて、もう少し詳しく見てみましょう。

ケース1とケース2の違いは、株価が上昇した銘柄のみで、それぞれの株価上昇率は同じとなっています。(ケース1では銘柄Bが43%上昇し、ケース2では銘柄Aが43%上昇。もう一方の銘柄は不変)このとき、それぞれの指数の上昇率はケース1とケース2で大きく異なります。

ケース1では、銘柄Bの株価上昇率(+43%)は、時価総額加重型指数の上昇率(+9%)よりも株価平均型指数の上昇率(+40%)に大きな影響を与えている一方、ケース2では、銘柄Aの株価上昇率(+43%)は株価平均型指数の上昇率(+3%)よりも時価総額加重型指数の上昇率(+34%)に大きな影響を与えています。

一般的に、株価平均型の指数は、上場株式数を勘案しないため、一株あたりの株価が高い銘柄の影響を受けやすい一方、時価総額加重型の指数は、時価総額の大きい銘柄の影響を受けやすい傾向にあります。このため、ともに日本の株式市場の動向を表す指数として広く用いられているTOPIXと日経平均株価ですが、算出方法の違いから指数値に与える影響が大きい銘柄が異なります。

TOPIXと日経平均株価のウエイト(指数における影響度)の2024年10月末時点の上位を比べると、最も大きい銘柄は、TOPIXはトヨタ自動車で、日経平均株価はファーストリテイリングです。

TOPIXでは最大(3.69%)のトヨタ自動車の日経平均株価におけるウエイトは16位の1.13%。反対に、日経平均株価では最大(11.25%)のファーストリテイリングのTOPIXにおけるウエイトは25位の0.76%ですので、大きな差があることがわかります。

また、上位5社の顔触れはすべて異なり、上位5社のウエイト合計はTOPIXが13.50%、日経平均株価が30.53%と、TOPIXの方が上位銘柄から受ける影響の度合いが小さくなっております。

【ウエイトの状況(2024年10月末時点)】

このように、異なる特徴を持つ2つの算出方法ですが、現在の世界の主要な株価指数の多くは、株式市場の動向を示す指標として上場会社の企業価値を反映する「時価総額加重型」を採用しており、TOPIXもその一つです。

【世界の主要株価指数】

3.おわりに

今回の記事では、株価平均型と時価総額加重型の算出方法の違いを中心に、TOPIXの特徴や日経平均との違いについてご紹介しました。

次回の記事では、TOPIXの3つの役割のうち、「投資理論に基づく投資対象」としてのTOPIXについて詳しくご紹介したいと思いますので、ご期待ください。

※ TOPIX等の動きに連動する運用成果をめざして運用されるETF(上場投資信託)は、現在9銘柄、東証市場に上場しております。ご興味のある方はこちらもご参照ください。(名称をクリックしていただくと、東証マネ部!の銘柄詳細ページが表示されます。)

コード 名称
1305 ダイワ上場投信-トピックス
1306 NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投資信託
1308 上場インデックスファンドTOPIX
1348 MAXIS トピックス上場投信
1473 One ETF トピックス
1475 iシェアーズ・コア TOPIX ETF
2524 NZAM 上場投信 TOPIX
2557 SMDAM トピックス上場投信
2625 iFreeETF TOPIX(年4回決算型)
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