経済の基礎、「金利」を攻略しよう

日経記事で学ぶ~幸福寿命を延ばす投資術7

提供元:日本経済新聞社

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政策金利と市場金利、長短金利が最重要ワード

金利にはみなさんが銀行などでお世話になる預貯金金利以外にも多くの種類があります。もっとも重要なのが政策金利と市場金利です。市場金利は長期金利と短期金利に分かれます。その意味と違いをまず理解しましょう。

政策金利とは中央銀行が経済・金融政策の一環として恣意的に操作する金利です。日本の中央銀行は日銀で、米国は米連邦準備理事会(FRB)です。このあたりは聞いたことがありますよね?

日銀が動かす政策金利はきょう借りて明日返すような超短期の金利です。覚えなくてもよいですが、無担保コール翌日物レートといいます。この金利を上げ下げ(通常は利上げ、利下げという)することが代表的な金融政策です。

日銀が金利を操作するのに対して、市場で決まるのが市場金利です。売り手と買い手の需給関係で決まるわけです。金利の需給ってイメージがわかないと思いますが、代表的な金利商品である債券の売買で決めます。

債券とは有価証券の形にした借金です。借金ですから100万円借りたら100万円返済しないといけません。借りている間は「借り賃」や「お金の利用料」を別途支払わないといけません。この借り賃、利用料こそが「金利」です。

ここまで大丈夫でしょうか? 私が言うのもなんですが、これ以上ないほどわかりやすく解説しているつもりですよ。

債券の券面には借り賃、つまり金利が記載されており、表面利率といいます。たとえば1枚100万円の債券があって表面利率1%だとすると債券を発行した国や会社は、毎年1万円を借り賃として購入者に支払います。債券は借入期間が決まっていて2年や5年、10年、30年といろいろあります。期間が終わると借金を返済(債券の満期償還)します。

では1枚100万円の債券があって表面利率1%と仮定しましょう。期間10年。ここで預貯金金利が1.5%とします。預貯金に入れると1.5%なのだから、表面利率1%の債券などばかばかしくて誰も買いません。借り賃で言い直すと、1%の借り賃をもらうより、預貯金で1.5%利子をもらったほうが得なわけですから。

すると債券の人気がなくなって100万円の価格が下落してしまいます。たとえば95万円に値下がりしたとしましょう。95万円でこの債券を買った場合、10年後には100万円で返済(償還)されますから差し引き5万円のもうけが出ます。10年間で5万円のもうけなので1年当たり5000円のもうけと計算できます。表面利率1%なので毎年1万円の利子と合わせるとどうなるでしょうか?

5000円+1万円=1万5000円。つまり、預貯金金利と同じ1.5%になりました。この1.5%が債券の利回りです。

表面利率が1%でも市場の需給関係が反映されることで債券価格が下がり、利回りが1%→1.5%へ上昇。結局、市場の実勢と同じ金利水準にまで切りあがったわけです。ここで、債券の価格と利回りは逆の相関性になることも理解できたかと思います。

ところで、債券と一口にいっても数千種類以上あります。この中で、もっとも流通量が多く市場の需給が反映される債券が期間10年の長期国債です。そして一番新しく発行された長期国債の表面利率は市場の実勢にもっとも近くなります。この新発10年物国債の需給こそが最新の市場環境を反映した金利水準と言えますから、この長期国債価格つまり利回りが長期金利の指標性を帯びることになります。

最後に期間について。日銀が政策的に動かす金利は期間1日の超短期金利ですが、それによって期間のより長い金利が動き、さらにその金利が動くともっと年限の長い金利が変動します。日銀は根っこの超短期金利を動かすことで長期の金利にも影響を及ぼしているのです。

たしかに長期金利は市場の需給で決まる市場金利ですが、市場はそもそも日銀の政策判断をもっとも重視して売り買いしますから、結局は日銀が間接的にコントロールを及ぼす形になります。たとえば、日銀が「利上げするぞ」というような姿勢やメッセージを発した場合、投資家は今の国債について買いを見送ります。もう少し待って利上げしたあとのほうがより利子の多い債券が手に入るわけですから、いまの金利の国債に魅力を感じなくなるわけです。すると国債価格が下落→利回りは上昇→長期金利が上昇、という循環になり、果たして日銀の思惑通りに市場金利も上がるのです。

著者/ライター
田中 彰一
日本経済新聞社コンテンツプロデューサー兼日経CNBC解説委員。マーケット・企業取材歴35年と現役最古参。日経電子版の開発、ニュースレター連載、テレビ解説と「創る・書く・話す」の三刀流をこなす。CFP認定者、シニア・プライベートバンカー、宅建士。東証マネ部!の長寿コラム「日経記事でマネートレーニング」はデジタル小冊子に(無料ダウンロード可)
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