【調査を読み解くシリーズ】インフレへの対応手段としての「投資」の浸透は道半ば
提供元:アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所
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「調査を読み解く」シリーズの第2回。今回は私たちの生活を悩ます「インフレ(物価の上昇)」に関するデータに注目してみたいと思います。
【目次】
▶ 継続するインフレに悩む生活者
▶ インフレへの対応手段としての「投資」の浸透は進んでいるのか?
継続するインフレに悩む生活者
インフレ(物価の上昇)が続いています。最近では、お米の価格高騰のニュースを見ない日はありません。多くの人が、さまざまなモノやサービスの価格が上がっていることを実感しているのではないでしょうか。
【図表1】は家庭で消費するモノやサービスの価格の動向を示す消費者物価指数(前年同月比)の推移を示しています。ここでは「総合指数」と「食料」に着目してみましょう。このグラフは前年同月比の値を示していて、前年の同じ月と比べて物価が何パーセント上昇・下落したのかを知ることができます。
2020年1月以降の動向を見てみると、総合指数(消費者物価指数の調査対象品目すべてから構成)は2021年夏ごろからインフレが続いており、ここ3年ほどは前の年に比べ3%前後のインフレが定着しています。単純に考えると、現在1万円で買えるモノが10年後には1万3,000円を支払わなければ買うことができなくなる計算です。その分給料が上がれば問題ありませんが…。
筆者も含め、多くの人が最も敏感にインフレを感じるのが食べ物の価格ではないでしょうか。食料の物価の推移を見ると、総合指数を大きく上回るペースで価格の上昇が進んでいることが分かります。
報道などで取り上げられるのは「総合指数」や「生鮮食品を除く総合指数」です。ニュースで見るインフレ率よりも、もっと実際の物価は上がっていると感じるのは、食料品や電気、ガスといった日常生活と密接したモノやサービスの価格がそれ以上に上がっているからと言えます。このインフレは今後も続くと考えられています。
【図表1】
インフレに対して、世の中の人々はどのように考えているのでしょうか。【図表2】は内閣府が毎年実施している「国民の生活に関する世論調査」の結果です。
今後、政府がどのようなことに力を入れるべきだと思うかを聞いたところ、「医療・年金などの社会保障の整備」(64.6%)、「景気対策」(58.7%)、「高齢社会対策」(52.2%)などを上回って、「物価対策」を挙げた人の割合が66.1%で最も多く、一番の悩みはインフレであることがうかがえます。
【図表2】
「物価対策」が過去からずっと高い要望として挙がっていたわけではありません。【図表3】をご覧いただければ分かる通り、2021年9月の調査では32.9%であったのが、2022年10月の調査では64.4%と急激に増加し、それ以降も60%を超える回答が続いています。
先の【図表1】を改めて確認すると、2021年9月の物価は前年同月(2020年9月)とほとんど変わらない状況でした。しかし、2022年10月は前年同月(2021年10月)に比べて約4%の物価上昇が見られました。この急激な物価上昇が「物価対策」を求める声の急増につながったと考えられます。それ以降も同じようなペースで物価の上昇が続いているため、政府に対する「物価対策」の要望が高い割合で継続しています。
この結果から、国民は目の前の悩みに対して敏感に反応していることが分かります。
【図表3】
研究員
証券会社で個人投資家向けの商品企画や営業企画を携わった後、IT企業でフィンテックアプリの運営を担う。2020年アセットマネジメントOneに中途で入社後は営業企画や新規ビジネス企画などに従事。2024年4月より現職。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。