第1回:オールカントリーの正体とは? 〜MSCI ACWI指数を読み解く〜

提供元:MSCI

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日々、多くの投資家が利用する金融商品。その背後には、「指数(インデックス)」の存在があります。しかし、その仕組みや役割について、意外と知られていないのが実情です。指数は単なるベンチマークにとどまらず、市場を理解・比較するための共通の基盤として、商品設計や運用評価に幅広く用いられています。本シリーズでは、指数の仕組みを解説するとともに、グローバルな指数プロバイダーとしてのMSCIの取り組みについてご紹介していきます。

最近よく聞く「全世界株式インデックス」や「オールカントリー」。新NISAをきっかけに投資を始めた方にとっても、「聞いたことあるけど中身はよくわからない…」という声も少なくありません。MSCI ACWI指数は、世界の株式市場を幅広くカバーし、グローバル株式投資の代表的な指標として世界中の投資家に広く利用されています。

「ACWI」ってどういう意味?

「ACWI(アクウィー)」は、「All Country World Index」の略称です。1990年5月にMSCIが提供を開始した当指数は、グローバル株式市場のスナップショットを提供することを目的としています。特徴は、先進国(米国、日本、英国など)と新興国(中国、ブラジル、インドなど)を含む47か国の株式市場をカバーしている点です(2025年8月時点) 1

図表1:「MSCI ACWI指数のグローバル展開」(MSCI作成)

構成銘柄は大型株および中型株の約2,500社(2025年6月時点)にのぼり、世界の株式時価総額のおよそ85%をカバーしています2。また、幅広いセクター(業種)と地域にわたる企業で構成されており、主な構成銘柄には、米国のApple、Microsoft、NVIDIA、Amazonに加え、日本のトヨタ自動車、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)、スイスのNestléなどのグローバル企業が含まれています。

このように幅広い市場を網羅していることから、ACWI指数は世界の株式市場全体の動向を把握するうえで、重要な参考指標として活用されています。

MSCI ACWI指数は、なぜ分散投資に役立つのか?

ACWI指数の最大の特徴は、「浮動株調整後時価総額加重型」の構成です。つまり、会社の規模(時価総額)が大きいほど、指数全体に与える影響も大きくなる仕組みになっています。そのため、当指数における米国の構成比は全体の半分以上を占めており、比重がかなり大きいのも事実です。しかし、それだけ世界の時価総額に占める米国の存在感が大きいということでもあります。

この加重方式により米国が大半を占めているとしたら、ACWI指数が分散投資をどう支援するのか不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、分散投資は必ずしも均等な代表性を意味するのではなく、広範なエクスポージャーも意味することを忘れてはなりません。

たしかに、米国の構成比は大きいものの、当指数には新興国や欧州、アジアをはじめとする他地域の企業も数多く組み入れられています。さらに、当指数における時価総額のウェイト(比重)は、企業が実際に収益を上げている地域の構成とは異なる場合があります(詳細は図表2:「MSCI ACWI指数における時価総額のウェイトと収益エクスポージャーの比較」をご覧ください)。こうした地域的な多様性によって、成長スピードや経済環境が異なる複数の市場の動きを、ひとつの指数で捉えることが可能になります。

図表2:「MSCI ACWI指数における時価総額のウェイトと収益エクスポージャーの比較」(MSCI作成)

さらに、当指数は時代の変化を映し出し、少しずつ形を変えながら「世界の今」をとらえ続けています。その結果、指数そのものも、構成銘柄も、世界経済や産業、そして市場の変化に応じて進化していくことができます。

なぜ分散投資が重要なのか

「分散投資」とは、特定のリスクに偏らないようにする考え方であり、グローバルな投資においては、地域や業種、国ごとの経済状況が異なる複数の投資先に分けて投資することを指します。

市場の動きや経済の状況は年々変化するため、その変化を正確に予測するのは簡単ではありません。ACWI指数は、地域的にも業種的にも多様な企業を組み入れているため、世界の株式市場全体の動きをバランスよく捉え、特定の地域やセクターに過度に依存するリスクを抑える助けとなります。

そして重要なのが、ACWI指数は世界中のすべての上場企業を取り込もうとしているわけではない、という点です。規模が小さすぎたり、取引量が非常に少なかったり、海外投資家が売買しにくい規制がある企業が多く存在します。そのため、当指数では、時価総額、流動性、投資可能性(アクセスのしやすさ)といった客観的な基準に基づいて銘柄が選定されています。

具体的には、一定以上の企業規模があり、十分に取引されていて、国境を越えて投資できることが条件です。このような厳選されたアプローチにより、グローバル市場を広くカバーしつつ、実際に投資家の皆様が投資可能な企業群を指数として表しています。

投資家は、MSCI ACWI指数をどのように活用しているのか?

ACWI指数は、金融業界全体で広く使われている投資商品の「土台」となる存在です。たとえば、機関投資家がグローバル株式市場の動きや運用成績を比較する際のベンチマーク(指標)として、よく利用されています。さらに、この指数の構成やメソドロジー(ルール)は、投資信託やUCITSファンド、ETF(上場投資信託)といった商品の設計にも活用されており、そうした商品を通じて、一般の個人投資家もグローバルな分散投資にアクセスできる仕組みとなっています。

2024年12月時点で、MSCI ACWI指数に連動するETFの運用資産総額は、合計で3,860億米ドル(約61兆円超)にのぼります。これはACWI指数がグローバルな投資戦略において、いかに重要な役割を果たしているかを示す数字でもあります。

MSCIは、指数だけでなく、データや分析ツールを通じて、投資家の意思決定を支援する多面的な役割を担っています。本シリーズの第二回では、MSCIという企業そのものに焦点を当て、単なるベンチマーク提供を超えて、投資のエコシステムをどう支えているのかをご紹介します。

指数の仕組みや、金融市場全体の中での役割について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください

1, 2 MSCI. MSCI ACWI Index Factsheet.
https://www.msci.com/documents/10199/8d97d244-4685-4200-a24c-3e2942e3adeb.

*分散投資は、いかなる場合においても投資元本の保証や損失の回避を保証するものではありません。MSCI ACWI IMIなどの指数は幅広い地域・業種・企業規模に分散された構成となっていますが、市場動向、為替変動、その他の外的要因の影響を受ける可能性があります。

(提供元:MSCI)

 

MSCI ACWIに関連するETFはこちら

・上場インデックスファンド世界株式(MSCI ACWI)除く日本(1554

・MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信(2559

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