まだ見ぬ将来世代の利益を考慮した意思決定「フューチャー・デザイン」前編

大阪大学教授が語る「将来世代視点」が事業戦略にもたらす影響

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「フューチャー・デザイン」と「バックキャスティング」の違い

「フューチャー・デザイン」の考え方で政策や事業を考え、実践していくには、将来世代の視点を取得して、現代の意思決定を考察することが重要になるとのこと。

ここでポイントとなるのが、理想となる将来像を設定してから、逆算して計画を立てる「バックキャスティング」とは異なるという点だ。

「『バックキャスティング』は、いまを生きる人の視点で未来をゴールに設定している時点で、将来世代が求めるゴールとは異なるかもしれません。なぜかというと、そのゴールは現在の延長で想像した理想の未来であり、人の性質である近視眼性や楽観バイアスが背後で働く可能性もあるからです。『こんな未来にしたいから、いまはこれをする』という現世代の視点ではなく、『2050年“現在”はこんな時代だから、過去の人にこういうことをしてほしかった』という将来世代の視点で考えることが重要だと捉えています」

また、「バックキャスティング」の思考だけで長期の目標や計画を立てると、社会変革のための動機付けが生まれにくい可能性があるという。

「ゴールを設定して、『10年後までにこの事業を実現する』『20年後までにこの社会目標を達成する』という計画を立てられたとしても、その実現にさまざまな努力や変革が伴う場合は“絵に描いた餅”になる可能性があります。設定した未来社会のゴールにたどり着くための変革の動機付けが付与される必要があります」

例えば、元日に1年の目標を立てたものの、なかなか計画通りに進まないという経験がある人は多いだろう。これは、人間の近視眼的な性質が働いてしまうからだと考えられる。

「社会課題に対する長期的な目標を立て、実践していくと、『新たな機材を導入したほうが環境負荷が低減する』『別の組織とすぐ手を組んだほうが将来的に事業が回りやすくなり、社会貢献にもつながる』といった分岐点が出てくるものです。ただし、いまを生きる現在の視点で思考すると将来のことを自分事化しづらいので、社会変革のインセンティブが付与されづらく、『コストがかかるから現状維持にしよう』という判断になりやすいと考えられます」

お話を伺った方
原 圭史郎
大阪大学大学院工学研究科教授。東京大学工学部都市工学科卒業、同大学院新領域創成科学研究科博士課程修了。大阪大学環境イノベーションデザインセンター等を経て、2016年に大阪大学大学院工学研究科准教授に就任。2019年10月より現職。2020年度より同研究科附属フューチャーイノベーションセンター副センター長、2021年度より同研究科テクノアリーナ最先端研究拠点部門「フューチャー・デザイン革新拠点」拠点長。「フューチャー・デザイン」に関する研究と産学官の連携を通じた実践を進めている。
著者/ライター
有竹 亮介
音楽にエンタメ、ペット、子育て、ビジネスなど、なんでもこなす雑食ライター。『東証マネ部!』を担当したことでお金や金融に興味が湧き、少しずつ実践しながら学んでいるところ。

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