企業取材の“数”と“幅広さ”が自身の強み
AI時代の成長銘柄を見極めるには? 三井住友DSアセットマネジメント・金子将大氏は、企業への“問い”からその答えを探る
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年間300〜400社の企業取材をこなすファンドマネージャーがいる。三井住友DSアセットマネジメントの金子将大氏だ。同氏が得意とするのは「中小型株」であり、スタートアップを含め、時価総額100億円未満の企業にも積極的に足を運ぶ。そんな金子氏は、スタートアップが多数上場するグロース市場の動向をどう見ているのか。本人に尋ねると、「AIに代替されず生き残っていく企業を見極めることが重要になる」と語る。
日本株の運用を担うファンドマネージャーに取材する連載「ニッポン、新時代」。今回は、金子氏が見据えるグロース市場の展望や、同氏の投資スタイルに迫った。
3年ないしは1年でビジネスが一変する可能性
「AIが市場に及ぼす影響は、今後さらに大きくなると考えています」
取材の中で、金子氏に「今後のグロース市場」について尋ねると、迷わずにこう答えた。
「10年後も本当にその企業のサービスが残っているのか、あるいはAIに代替されているのか、今から真剣に議論しておかなければなりません。特にグロース市場は、AIに代替されるリスクの高い事業を行う銘柄が多く存在しますから」
2026年初頭から、「SaaSの死」という言葉が世界中に広まった。企業の業務用ソフトウェアを、サブスクリプション(月額制)で提供するSaaS。近年大きく成長してきた領域だが、それらは近いうちにAIに代替されるのでは――。こうした観測が広まったのである。メディアはこぞって「SaaSの死」と表現した。
一連のきっかけになったのは、米AI企業・アンソロピックのAIエージェント「Claude Cowork」が登場したことだった。その性能の高さから、従来のSaaSが担っていた機能をこのAIエージェントが代替するという声が出てきたのである。
金子氏も実際に「Claude Cowork」を使用し、AIが市場に与える影響は相当なものになると感じたという。とりわけグロース市場は、その動向に注視した方がよいと口にする。
「グロース市場の銘柄は情報通信業が多く、AIに代替されるリスクが高いといえます。AIの進化の速度を考えると、3年ないしは1年でビジネスの状況が一変している可能性さえあるでしょう。その動向を予測しながら、どの銘柄に投資していくか、慎重に戦略を立てなければなりません」
この企業はAI時代に生き残れるのか、それとも代替されるリスクがあるのか。その見極めが重要になるという。また、実際には代替されなくても、投資家から「その可能性がある」と思われてしまえば、該当銘柄の株価は上がりにくくなる。投資家がどう感じるかもふまえて、AI時代に伸びる銘柄を探していく必要があるという。
「ただし、AIに代替されるリスクがあっても、それに代わる新サービスを開発する、あるいは業態転換を図ることで、その企業が次の成長を実現することも考えられます。代替されるリスクがあると成長できない、ということではありません。さまざまな視点で銘柄を分析することが大切ではないでしょうか」
これらをふまえて、金子氏は日々行う企業取材において、徹底して「AIの影響」を尋ねているという。進化するAIに対して、その企業のサービスは本当に価値を出し続けられるのか。あるいは代替されても次の手があるのか。「しっかりと聞くようにしています」と話す。
このような問いを行うためには、金子氏自身が「AIの最前線」を知っておくことも重要だという。AIは今どのような技術レベルまで進化しているのか、今後どういったサービスが出てくるのか。そういった知識を蓄えなければ、各社がAIによって受ける影響も推測できないからだ。
「その意味で大切にしているのは、AIのサービスやビジネスを展開している企業への取材です。なぜなら、その方々こそAIにもっとも詳しいからです。つまり、AI企業への取材が、AI自体の深い情報を得る時間になる。私たちが日々行う企業取材は、その企業に投資するかの判断材料を集めるだけでなく、最新の技術やビジネスの情報を収集する場でもあるのです」




