全国主要エリアで紐解く住宅ローン実態(2)

ギリギリでの借入は多い?住宅購入後の家計を読み解く

提供元:三井住友トラスト・資産のミライ研究所

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前回は、住宅ローンの借り方や選び方に見られる地域差について確認しました。ペアローンや超長期ローンといった選択は、地域ごとの前提条件の違いを反映していることが見えてきました。

では実際に、その結果として家計はどのような状態になっているのでしょうか。今回は、住宅購入後の家計に焦点を当て、「無理のない借り入れができているのか」という点をデータから読み解いていきます。

借入額は増加、資産全体のバランスを意識か

まず、住宅ローンの借入額を見てみます。エリア別に見ると、借入額の中央値は首都圏が最も高く、約3割の世帯が5,000万円超の借入となっています(図表1)。住宅価格の高さを考えれば当然とも言える結果ですが、数字だけを見ると「かなり負担が重いのではないか」と感じる方も多いかもしれません。

一方で、頭金の状況を見ると、どのエリアでも「ゼロ~1割程度」が過半数を占めています(図表2)。つまり、多くの世帯が自己資金を大きく取り崩すのではなく、一定程度手元に残した状態で住宅ローンを組んでいるということが考えられます。
この背景には、将来の不確実性への備えや、教育費・生活費とのバランス、住宅ローン控除を意識した行動があると考えられます。住宅購入にあたって「とにかく頭金を多く入れる」という考え方から、「手元資金も含めて全体のバランスを取る」という考え方へシフトしている様子がうかがえます。

【図表1】エリア別 借入額

※回答者:住宅ローン返済中かつ2021年以降に住宅購入、借入額「わからない、覚えていない」回答除く
※中央値は、該当階級内で回答が均等に分布していると仮定して推計 ※中央値は四捨五入
(出所)特に出所を示していない場合、三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2026年)

【図表2】エリア別 頭金比率

※回答者:住宅ローン返済中かつ2021年以降に住宅購入、頭金「わからない、忘れた」回答除く

「年収の何倍か」で見ると、土地付注文住宅は横並び

さらに重要なのが、年収とのバランスです。世帯年収の水準は首都圏が最も高くなっていますが、住宅価格を世帯年収で割った「年収倍率」で土地付注文住宅の水準を見ると、いずれの地域もおおむね7倍程度で横並びとなっています(図表3)。

つまり、住宅価格そのものには地域差があるものの、「収入に対してどの程度の価格の住宅を購入しているか」という観点では、大きな違いがないということになります。首都圏では高価格帯の住宅が多い一方で、それを支える収入水準も相対的に高く、結果としてバランスが取れている構図が見えてきます。

逆に言えば、「首都圏だから特別に無理をしている」というわけではなく、それぞれの地域において、無理のない範囲で住宅購入が行われている可能性が高いと考えられます。

【図表3】エリア別 住宅価格(平均)と年収倍率

(出所)世帯年収中央値:本調査の住宅ローン返済中かつ2021年以降に住宅購入、年収「わからない/答えたくない」回答除く回答の中で、該当階級内で回答が均等に分布していると仮定して推計。中央値は四捨五入
土地付き注文住宅・建売住宅・マンション平均価格:住宅金融支援機構「2024年度フラット35利用調査」をもとに作成。土地付き注文住宅の購入費用は、建設費と土地取得費を合わせた金額。
※エリア表記は「住宅金融支援機構」調査データに準ずる。首都圏=東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県、近畿圏=大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・滋賀県・和歌山県、東海圏=愛知県・岐阜県・静岡県・三重県、その他地域=首都圏・近畿圏・東海圏以外の地域

月々の返済はどのくらい?

では、実際の返済負担はどうでしょうか。住宅ローンの返済負担割合を見ると、世帯年収に対して3割以下に収まっている世帯が大半を占めています(図表4)。借入額が増加しているにもかかわらず、月々の返済額自体は一定の範囲に抑えられていることが分かります。

これは、前回見たような借入期間の長期化や、ペアローンの活用といった工夫による影響と考えられます。単純に借入額だけを見ると負担が増しているように見えますが、実際には家計全体として調整が行われているということです。

ただし、注意すべき点もあります。返済比率が4割以上となっている世帯も、首都圏や近畿圏では1割以上存在しています。全体としては無理のない水準に収まっているものの、一部の層では相対的に負担が重くなっている状況も見られます。

【図表4】エリア別 返済負担割合

※回答者:住宅ローン返済中かつ2021年以降に住宅購入、返済比率「わからない」回答除く

ローン返済と資産形成、両立できているのか

もう一つの重要な視点が、「住宅ローン返済と資産形成の関係」です。三大都市圏では、「住宅ローンを返済しながらも資産形成に取り組んでいる」と回答した世帯が過半数に達しています(図表5)。住宅価格や借入額が高い都市部においても、返済と並行して貯蓄や投資を進めている世帯が多い点は特徴的です。

一方で、その他地域では、住宅ローンの返済を優先する傾向が相対的に強く見られました。返済比率自体には大きな差はないものの、「余裕を資産形成に回すか、それともまずは返済に充てるか」という判断に違いがあると考えられます。

この違いは、単に収入や物価の差だけではなく、将来への備え方やリスクの取り方といった価値観の違いも反映している可能性があります。

【図表5】エリア別 返済と資産形成の両立状況

※回答者:住宅ローン返済中かつ2021年以降に住宅購入、返済と資産形成の両立「この中にはひとつもない」回答除く

「一般的な正解」に頼りすぎないこと

ここまで2回のコラムで見てきた通り、住宅購入や住宅ローンの選び方には地域差が存在します。ただし、それは優劣の差ではなく、それぞれの地域における前提条件の違いから生まれるものです。

住宅購入をめぐっては、ペアローンや超長期ローン、金利動向など、さまざまな情報があふれています。こうした情報は参考になりますが、他人の事例や一般論に引きずられすぎると、自分の家計やライフプランに合わない判断につながるおそれもあります。
一方で、「自分には関係ない」と情報を遮断してしまうと、判断に必要な材料そのものが不足してしまいます。

住宅ローンは長期間にわたる選択です。だからこそ、その時々の条件だけで決めるのではなく、自身の家計やライフプランと向き合いながら、「無理のない状態が維持できているか」を定期的に確認していくことが重要です。

(三井住友トラスト・資産のミライ研究所 桝本 希)

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