大手企業の導入も進む
「もらってうれしい」から「贈ってうれしい」株主優待へ。 優待寄付という仕組みで、株式市場から社会課題の解決を
企業の株を保有していると届く株主優待。実は、使われないまま放置されたり、有効活用されなかったりする優待を、NPOなどへの寄付につなげる仕組みがある。「優待寄付」というものだ。
この仕組みを提供しているのが、一般社団法人ギビングフォワードだ。現在は、優待寄付を全国に広める「優活プロジェクト」を推進している。なぜ、株主優待と寄付を結びつけようと考えたのか。また、これまでにどのような寄付の事例が生まれているのか。代表理事の岸本和久氏と稲見ケイ氏に聞いた。
企業に届く大量の優待、「使い道がない」という問題
株主優待は、日本独特のカルチャーともいわれる。海外では配当による株主還元が一般的で、日本のように企業が自社商品やサービスなどを株主に贈る仕組みは珍しい。
株主優待を受け取るのは、個人投資家だけではない。銀行や証券会社、あるいは「政策保有株」を持つ企業など、株を保有している機関なら、等しく株主優待が送られてくる。
個人と違うのは、その量だ。企業の場合、多くの銘柄を保有していることもあり、その分、さまざまな投資先から優待品や優待券が届く。
「ところが企業の場合、届いた優待をどう活用すればいいか、困っているケースも少なくありません。社内で活用するという方法もありますが、会計上の扱いなどが複雑になり、細かな調整が必要になります。結果、せっかくの優待が使われず、廃棄されてしまうケースもあるのです」
ギビングフォワードの創設者であり、代表理事を務める岸本氏は、株主優待の実情をこう話す。
岸本氏は1987年に野村證券へ入社し、22年間の海外駐在などを経験してきた。海外では、日本独自のカルチャーである株主優待について、機関投資家と話すこともあったという。その中で「届いた優待の使い方に困っている」「廃棄されることもある」という現実を知り、率直に「もったいない」と感じた。
「ちょうどその頃、NPOの方と知り合う機会があり、社会貢献活動をしている団体も、運営を続けるために大変な思いをされていることを知りました。そこで、使われなくなった株主優待とNPOの支援を結びつけることができないかと考え始めました。2017年には、野村證券の外で有志の勉強会を立ち上げ、優待寄付の仕組みを検討するようになったのです」
当時、この勉強会に参加していたのが、稲見氏だった。「NPOの方や、企業で優待の受け取りを担当する方をお招きし、どうすれば余った優待とNPOへの支援をつなげられるのか、意見を出し合っていきました」と振り返る。
こうして2018年につくられたのが、優待寄付の仕組みである。岸本氏はこの方法を広めるため、2019年に野村證券との兼業でギビングフォワードを設立。2020年には野村證券を退職し、軸足を“証券”から“寄付”へと移した。





