大手企業の導入も進む
「もらってうれしい」から「贈ってうれしい」株主優待へ。 優待寄付という仕組みで、株式市場から社会課題の解決を
10年後には100%へ、「寄付」を株主優待のデフォルトに
岸本氏には、優待寄付を通じて実現したい目標がある。
株主優待を実施する企業のうち、寄付の選択肢を設けているのは13.5%ほど(※)。これは、ギビングフォワードの仕組みを活用していない企業も含めた数字だ。岸本氏は、この割合を10年後には100%に近づけたいという。「寄付という選択肢を、株主優待のデフォルトにしたいですね」と、笑顔を見せる。
※会社四季報データに基づくギビングフォワードの分析(2025年10月時点)
岸本氏が「寄付」を広げようとしているのは、株主優待の領域にとどまらない。同氏は、公益財団法人日本フィランソロピック財団の代表理事も務め、寄付を通じた社会貢献を考えている方の「おもい」を基金にして、社会課題の解決に取り組む団体への助成につなげている。
岸本氏によると、アメリカの個人による寄付の規模は、約40兆円に上るという。一方、日本の個人寄付総額は、2024年で2兆261億円ほど。これは過去最高の数字だったが、両国のGDPの違いを踏まえても、大きな差があると言わざるを得ない。しかも日本の場合、ふるさと納税も上述の寄付総額に含まれており、それを除くと7533億円程度になる(寄付白書2025より)。
ただし、寄付額が少ないからといって「日本に寄付する文化がない」とは考えていない。十分な仕組みや環境が整っていないことが要因の1つだと岸本氏は指摘する。
優待寄付は、まさしくその「仕組み」の1つといえるだろう。
「株式投資というと、どうしても『お金を増やすためのもの』と思われがちです。でも、投資には社会貢献につながる面もあるはずです。優待寄付を通じて、そんな株式投資の見方も広がっていけばいいと思います」(稲見氏)
株主優待は、「株主への還元」を目的につくられた仕組みだ。しかし一方で「もったいない」を生んでいる実情もある。優待寄付は、その課題を解消し、株主への還元を「社会への還元」につなげるものである。
(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)


