大手企業の導入も進む
「もらってうれしい」から「贈ってうれしい」株主優待へ。 優待寄付という仕組みで、株式市場から社会課題の解決を
活動の中で「最初から寄付を選ぶ」仕組みを構築
ギビングフォワードが行う優待寄付には、大きく2つの方法がある。最初に始めたのは、企業などがすでに受け取った株主優待を寄付につなげる仕組みだ。
たとえば、企業から使わない優待品を引き取り、換金した後、NPOなどに寄付する。優待品を提供した企業には受領書を発行し、会計処理を適切に行えるようにする。
ギビングフォワードでは、この仕組みを「セカンダリー(受取り優待型)」と呼んでいる。これまでに、セカンダリーで寄付した総額は4500万円を超えているという。
しかし、セカンダリーの取り組みを進める中で、岸本氏はこの方法だけでは限界があると感じるようになった。
セカンダリーは、使われずに余った株主優待を有効活用できる一方、優待はいったん株主のもとに送られる。つまり、「使われない優待が生まれる」という問題そのものをなくす仕組みではない。
「それなら、そもそも優待を送る段階で、株主が『受け取るか、寄付するか』を選べるようにすればいい。そう考えて始めたのが、もう1つの優待寄付の仕組み『プライマリー(発行会社型)』です」(岸本氏)
プライマリーでは、株主優待を実施する企業があらかじめ「寄付」を選択肢として用意する。株主は、通常の優待品を受け取るか、その相当額を寄付するかを選ぶ。これなら、優待を必要としない株主には何も届かず、かつ寄付という社会貢献も行える。
プライマリー導入の第1号となったのがコクヨだ。同社は2022年度から、従来の「商品詰め合わせ」に加え、社会貢献活動への寄付を株主優待の選択肢として導入した。
「コクヨさんでは、文具などの自社商品を長く優待品として提供してきました。しかし、それ以外の選択肢も用意すべきでは、という思いがあったといいます」(稲見氏)
また、コクヨでは「Well-beingの向上」など、会社として力を入れるマテリアリティ(重点課題)を掲げている。その達成に貢献できる株主への施策はないか、IR部門でも模索しており、優待寄付が当てはまったという。
プライマリー導入からの4年間、コクヨでは、毎年4%ほどの株主が「寄付」を選んでいるとのこと。寄付額も、累計1164万円に達している。
寄付先はどう決まる? 重視するのは「企業の意志」
実際に、どのようなところへ優待が寄付されているのだろうか。これまでギビングフォワードが寄付した団体は延べ400を超える。子ども支援や、貧困問題・環境問題の解決を行うNPOなど、寄付先は多岐にわたる。
重要なのは、単に寄付先を紹介するのではなく、企業が重視する社会課題やマテリアリティをふまえて、送り先の団体を選んでいることだ。企業によって「子どもの支援に力を入れたい」「環境問題に貢献したい」などの考えがある。まずは企業の意向を聞き、ギビングフォワードが適切な団体を探していく。
「送り先の団体については、活動内容などの調査、その団体にリスクがないかを分析するデューデリジェンスを入念に行います。企業活動としての寄付ですから、健全な運営をしている団体に送ることが不可欠です。信頼できる寄付先を提案するのも、私たちの役割です」(稲見氏)
コクヨでも、自社のマテリアリティを軸に寄付先を選定した。まずはギビングフォワードが候補となる団体を複数選び、コクヨが決めたという。実際に寄付先として選ばれたのは、認定NPO法人ブリッジフォースマイルと、公益社団法人MORIUMIUS(モリウミアス)だった。
ブリッジフォースマイルは、児童養護施設や里親家庭などで暮らす子どもたちの自立を支援する団体。一方のMORIUMIUSは、宮城県石巻市雄勝町を拠点に、子どもたちが自然や地域から学ぶ場を提供している。
それぞれ、コクヨが掲げる「社内外のWell-beingの向上」「WORK & LIFEの基盤である地球を守るための活動」というマテリアリティにつながる寄付先だった。
優待寄付は、使われない優待を有効活用するだけではない。企業にとっては、自社がどんな社会課題を重視しているのか、株主に伝える機会にもなるだろう。




