「まだ名前がついていない価値を見つける」
テンバガー達成のファンドマネージャー、ブラックロック・ジャパン 高山博樹氏が語る、日本中小型株投資の本質
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これから注目している投資テーマとは?
いかにして「まだ名前がついていない価値」に気づけるか。それが高山氏の考える投資の本質だ。そのためには、指標などの数字を分析するだけでなく、社会構造や文化、生活者の思いを見つめ、そこで起きている変化を抽出していくことが重要といえる。
その変化を見つける上で、高山氏は自身の「2つのルーツ」が生きたという。「1つは、学生時代に社会学を専攻していたことです。決算上の数字だけでなく、その背景にある社会の構造や文化を観察し、変化を見つける視点は、社会学での学びが生きていますね」。
そしてもう1つ、意外なルーツが今の仕事を支えている。
「私はもともと、報道写真家になりたいと思っていました。実はそれも役立っていると感じます。というのも、私がファンドマネージャーとして大切にしているのは、現場に足を運んで調査すること、そして、1つの物事をいろいろな視点から見ていくこと、切り取っていくことです。どちらも、報道写真家に通じる考えであり、それを投資でも大切にしています」
休日にはバイクで地方を巡り、上場企業の本社や工場を眺めながら、その土地の郷土料理や地酒を楽しむという。利き酒師の資格も持ち、工場近くの少し年季の入った居酒屋で地酒を飲みながら、方言をつまみに郷土料理を楽しんでいると、その地域の空気感や、企業が土地にどう根付いているのかを感じることができると、にこやかに話す。
よい小型株も地酒も、価値が認識されるまでには時間がかかることがある。“知られていない”こと自体が価値の源泉になることもあるという。それを見つけていく過程をも、高山氏は楽しんでいるのだろう。
現場に行き、さまざまな角度から物事を見る。そうして今起きている“社会構造の変化”に着目し、偏見なく価値を見つけていく。これが高山氏のスタイルだ。
その実例として、ここ数年で建設業に投資した話を紹介する。
長らく「成長が期待できる業種」として建設業が挙がることは少なかった。グロース株ではなく、バリュー株として扱われることが多かったといえる。しかし数年前、社会の変化の中で、高山氏は「建設業は成長が見込める」と判断した。
「国内で大型半導体工場の建設が相次いで決まり、AI用のデータセンター建設も進むという見方が強まりました。長らく“古い産業”として見られていた建設業が、AIインフラを支える産業として見直され始めていたのです。こうして建設の需要が高まる一方、それを担う企業を見ると、少子高齢化や『2024年問題』と呼ばれる働き方改革で、労働力不足が起きていた。つまり、建設の需要は上がりながら、それに対する供給量が下がっていたのです。このように需給バランスがタイトになる中で、建設系の銘柄は上昇していくと判断。実際に、株価が2、3倍になった銘柄も出てきました」
では、視線を“過去”から“未来”に移して、高山氏がこれから注目している社会構造の変化とはどのようなものだろうか。
「先ほど話したように、このままデフレ脱却が進むと、個人の方がようやくその恩恵を受けられる流れになってくると考えています。企業に蓄積されていた富が、少しずつ家計に還元される流れに変わり始めているのではないかと思います。これは単なる景気循環というよりも、分配の構造そのものが変わる可能性がある点で重要だと考えています。特に若年層の賃金上昇が進むでしょう。となると、若い世代の個人消費に関連する産業・銘柄は1つ注目ではないでしょうか」
ただし、それだけでは“投資候補”として十分ではない。物事は組み合わせて考えることで、新たな視点が生まれるという。そこで、若者向けの個人消費サービスを展開しつつ、その事業が他の社会トレンドとも重なる銘柄が面白いとのこと。たとえば、若者消費と同時にインバウンド消費やEC、SNSマーケティングに届く事業を展開している銘柄などが一例だと話す。
海外投資家の注目度が高まっている日本株。高山氏は、改めて最後に「日本の投資家も、もっと国内の市場に目を向けてほしい」と伝える。「日本に住み、この国の変化を日々感じられること自体が、日本の投資家の強みです」。デフレからの脱却が進み、社会構造の変化が起きる中、数年後に輝く産業、銘柄を見つけるために。高山氏は今日も、「まだ名前がついていない価値」を探し続ける。
(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)
※記事の内容は2026年6月現在の情報です




