名義預金に太陽光パネル…
よくある相続税のトラブル事例とは
知っているようで知らない「相続税」。これまでの記事では、相続税の基礎知識や節税対策について触れてきた。
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それらを踏まえた上で気になるのは「相続税のトラブル例」だ。実際にある事例を聞くことで、事前の対策がより万全に行えるかもしれない。
何より、相続税の申告に漏れがあったり、トラブルで納税が遅れたりすれば、“ペナルティ”を課せられてしまう。
「相続税の申告が間違っていると、延滞税や過少申告加算税といった税金が加算されます。どちらもおおむね10%前後の金額が課せられるので、トラブルには注意が必要です」
こう話すのは、相続税を専門とする税理士の岡野雄志氏。そんな悲劇を回避するためにも、トラブル例を聞いておくことは有効だろう。ということで、岡野氏の話をもとに紹介したい。
多くの人が引っかかる「名義預金」のトラブルとは?
まず岡野氏が「相続税トラブルの筆頭」として挙げるのは、「名義預金」に関するものだ。名義預金とは、他人の名義を借りているに過ぎない預金のこと。形式的には家族の名前で預金しているが、実際は本人とは別に真の所有者がいるというものだ。
「以前、ある男性が亡くなり、その家族が相続税を申告したところ、故人の妻の名義だった預金も『故人の財産に含まれる』と判断されました。このパターンは非常に多く、対策が必要です」(岡野氏、以下同)
上の例の場合、故人の妻は専業主婦で収入はなかった。そこで故人は、妻に財産を残そうと彼女の名義で口座を作り、預金を貯めていた。実質的には故人の財産であり、それを指摘されたのである。もちろん相続税は増える。
岡野氏は「名義預金は税務調査において指摘率がもっとも高い」と言う。確かに、子や孫のために、彼らの名義で口座を作って預金している人は多いだろう。また、それこそ相続時の節税対策として、妻や子の名義で財産を貯めているケースもあるはず。これらがトラブルとなるパターンが非常に多いのだ。
では、名義預金かどうかを判断する基準は何なのだろう。岡野氏は「まず、本当にその預金は名義人が捻出したものかチェックされます」という。専業主婦やまだ学生の子どもが高額の預金をしていれば、出資者は別にいると見られやすくなる。
そのほか、預金の管理運用を名義人が行っていたか、預金から生じる利益(利息など)を名義人が享受していたかも判断ポイントとなるようだ。
では、名義預金にならず、配偶者や子どもに財産を移すにはどうすればよいのか。岡野氏は「贈与契約を結ぶことが大切」という。つまり、正式な贈与の契約があれば、その財産は正真正銘、名義人のものとなる。そして、年間110万円までなら贈与税もかからない。
それ以外の名義預金の対策としては、贈与された預金を出資者ではなく名義人が管理し、ときどきは口座からお金を引き出すなど「使っている形跡を残す」こと。これが、預金の管理運用を名義人が行っていた証明となる。
最近増えている「太陽光パネル」の申告も要注意
もうひとつ、最近の相続税トラブルとして多いのが「太陽光パネル」に関するケースだという。
「太陽光パネルを屋根につける家が増えていますが、相続税では『家庭用財産』として太陽光パネルも申告しなければいけません。しかし漏れていることが多く、税務調査で指摘される例が目立っています」
家庭用財産とは、主に家具や自動車、貴金属などで、これらも相続税の財産に含まれる。また、家屋の財産価値については、毎年の固定資産税の評価額をもとに計算される。
太陽光パネルを「家屋の一部」と捉えて、固定資産税の評価額に含まれると考えてしまう人もいる。しかし、太陽光パネルは家屋とは別の「家庭用財産」となる。その“申告漏れ”が多いようだ。
「太陽光パネルはもともと高額ですし、年数の経っていないものが多い。長く使っていれば減価償却により評価額は下がりますが、そういったケースは現状だと稀です。高い財産になりやすいですから、忘れずに申告しましょう」
大きな財産であればあるほど、その後のペナルティも重くのしかかる。ここで挙げた名義預金や太陽光パネルはその筆頭だ。注意したほうがいいだろう。
さて、これ以外にも相続税のトラブルケースはある様子。なかには、相続税対策として行ったことが裏目に出た場合も…。それについては次回紹介しよう。
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※記事の内容は2018年11月現在の情報です
(取材・文/有井太郎)