年末調整とは所得税の過不足の調整作業!確定申告との違いも解説

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年末調整とは、源泉徴収された所得税額と本来の税額の差を調整するための作業です。手続きを踏むことで、配偶者控除や生命保険料控除などの所得控除が反映され税額は低くなることがあります。

本記事では、年末調整とはどのような手続きか、確定申告との違いも交えながら解説しています。

年末調整とは

年末調整とは、従業員が勤務先を通じて源泉徴収された税額の年間合計額と年税額を一致させるための精算手続きです。概算で計算して源泉徴収された金額と正しい税額を比較し、過不足分が還付もしくは追加徴収されます。

より深く年末調整を理解できるように、年末調整が必要な理由や確定申告との違いについて確認していきましょう。

年末調整が必要な理由

毎月の給与などから源泉徴収された税額と、本来納付すべき税額との間に生じたズレを解消するため、年末調整が必要です。たとえば、生命保険料や地震保険料を支払っている場合、生命保険料控除・地震保険料控除で所得から一定額を控除できるため、当初予定していた金額より納付する税金が少なくなります。

源泉徴収された金額のほうが、実際に納付すべき金額より大きければ還付されるため、年末調整は自分自身にとっても大切な作業です。

年末調整と確定申告の違い

年末調整が所得税の過不足を精算する手続きであるのに対し、確定申告は所得の申告手続きである点が異なります。また、年末調整が通常その年の12月までに行う作業であるのに対し、確定申告の期限は原則として翌年の2月16日から3月15日までであることも違う点です。

会社員の場合、一般的に年末調整手続きのみで税金に関する手続きが完結するため、確定申告は必要となりません。ただし、給与が2,000万円を超える場合など、会社員でも確定申告が必要となる可能性はあります。

年末調整で精算?確定申告が必要?

所得控除を受けることにより、所得税額を算出する際に所得から一定額を差し引けるため、源泉徴収された額と正式な納付税額に差が生じる可能性は高いです。そして、所得控除の種類によって年末調整で精算可能か、確定申告が必要か異なります。

年末調整で精算可能な控除と、確定申告が必要な控除に分類し、理解していきましょう。

年末調整で精算可能な控除

年末調整で精算可能な控除の代表例が、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、生命保険料控除、地震保険料控除です。

納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に、一定の配偶者控除を受けられます。また、配偶者特別控除は、配偶者控除を受けられない場合に、配偶者の所得金額に応じて受けられる所得控除です。

扶養控除は、所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合に受けられます。生命保険料控除は生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料を支払った場合に受けられる控除で、地震保険料控除は、損害保険契約等にかかる地震等損害部分の保険料や掛金を支払った場合に受けられる控除です。

確定申告が必要な控除

医療費控除や寄附金控除、雑損控除、初年度の住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)を受ける場合は、確定申告しなければなりません。

医療費控除は、自分や家族のために支払った医療費が一定額を超える際に適用できます。寄附金控除は、国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し要件を満たした寄附(特定寄附金)を支出することで適用できる控除です。

寄附金控除の代表例として、ふるさと納税が挙げられます。ふるさと納税の寄附金控除を受ける方法は、以下の記事を参考にしてください。

ふるさと納税で確定申告が必要?手続きの簡素化のポイントも紹介

雑損控除は、要件を満たす資産が災害、盗難、横領で損害を受けた際に適用できます。住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマイホームを新築・取得などした際に適用できる控除です。

なお、住宅ローン控除は2年目以降は年末調整で精算できます。

年末調整の対象になる?ならない?

収入や働き方などの諸条件によって、年末調整の対象になる方とならない方がいます。それぞれの条件を整理し、自分がどちらに該当するか確認しておきましょう。

年末調整の対象になる方

「扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出し、年末時点で会社に在籍している方は、基本的に年末調整の対象になります。正社員に限らず、アルバイトやパートも条件を満たしていれば年末調整の対象です。

育休中の方も、所得控除に関する支出があれば税額に差が生じるため、年末調整しなければなりません。詳しくは以下の記事を参考にしてください。

育休中の年末調整はどうする?忘れた場合の対応方法も解説

年末調整の対象にならない方

継続して雇用されていない場合、年末調整の対象になりません。また、中途退職して年末時点で働いていない場合も対象外です。

年末調整の対象になる条件を満たしていても、年間の給与総額が2,000万円を超える場合や、災害によって住宅や家財に損害を受け、災害減免法によりその年の所得税が軽減免除されている場合なども年末調整の対象にはなりません。

年末調整の流れ

年末調整の全体の流れは以下のとおりです。

1.従業員が申告書類を作成して担当部門(人事等)に提出する
2.担当部門が年末調整を計算して源泉徴収票を作成する
3.担当部門が法定調書を各自治体や税務署に提出する

年末調整において、従業員が行う作業は1の部分のみです。勤務先から各種書類を受け取ったら、必要事項を記入しましょう。

従業員が年末調整で提出する4つの書類

従業員が、年末調整で勤務先に提出する書類は以下の4つです。

1.基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
2.扶養控除等(異動)申告書
3.保険料控除申告書
4.住宅借⼊⾦等特別控除申告書

各書類の概要や、記入箇所について簡単に解説します。

1.基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

「基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」は、給与所得者が基礎控除、配偶者(特別)控除、所得金額調整控除を受けるための書類です。

基礎控除は給与所得者の基礎控除申告書の欄、配偶者(特別)控除は給与所得者の配偶者控除等申告書の欄に記載します。控除対象の配偶者がいない場合、配偶者控除等申告書への記載は不要です。

所得金額調整控除は所得金額調整控除申告書の欄に記載します。年末調整の対象となる給与の収入金額が850万円以下の場合、記載は不要です。

2.扶養控除等(異動)申告書

扶養控除等(異動)申告書は、給与所得者が扶養控除を受けるための書類です。対象年の12月31日時点において、扶養している親族の情報を記載します。

控除対象扶養親族など、扶養する親族が該当する項目に記入が必要です。16歳未満の扶養親族がいる場合は、住民税に関する事項に記入します。

なお、源泉控除対象配偶者、障害者に該当する同一生計配偶者や扶養親族がなく、自身も障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生に該当しない場合は、記入不要です。

3.保険料控除申告書

保険料控除申告書は、生命保険料、地震保険料などの保険料控除を受けるための書類です。支払っている保険の種類に応じて、生命保険料控除(一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料)、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除の欄に記入していきます。

記入する内容は、保険会社などから送付される控除証明書で確認可能です。また、生命保険料控除と地震保険料控除の金額は、あらかじめ決められた式に従い計算しなければなりません。

4.住宅借⼊⾦等特別控除申告書

住宅借⼊⾦等特別控除申告書は、住宅ローンを利⽤してマイホームを取得した方が2年目以降に控除を受けるために提出する書類です。初年度に確定申告で住宅借入金等特別控除を申請した後、税務署から住宅借入金等特別控除申告書が届きます。

書類作成にあたって、借入金融機関から送付される住宅ローンの年末残高等証明書も必要です。残高証明書や住宅借⼊⾦等特別控除申告書下部に記載されている住宅ローン控除証明書を確認し、各部空欄を埋めていきます。

住宅ローンの年末調整について、詳しい内容は以下の記事を参考にしてください。

住宅ローン控除の年末調整で悩まない!必要書類をわかりやすく説明

年末調整の際に注意すること

最後に、年末調整の際に注意しなければならないことを2点紹介します。

副業していても複数の会社で年末調整はできない

原則として、主たる給与支払者以外からの給与(従たる給与)については、年末調整できません。つまり、副業していても複数の会社で年末調整することはできないため、自分で確定申告して所得税を精算することが必要です。

なお、主たる給与とは「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与を指します。

扶養内で働いている場合も年末調整は必要

扶養の範囲内で働いているケースにおいても、源泉徴収が行われている限り本来納付する税額との間に誤差が生じる可能性があるため、年末調整は必要です。

ここでは、年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)の範囲で働き、配偶者が配偶者控除を受けることを「扶養の範囲内で働く」と表現しています。

所得税の還付・徴収のために年末調整が大切

年末調整とは、従業員が勤務先を通じて源泉徴収された税額の年間合計額と年税額を一致させるための精算手続きです。毎月の給与などから源泉徴収された税額と、本来納付すべき税額との間に生じたズレを解消するため、年末調整をしなければなりません。

ただし、収入や所得控除の種類などによって、年末調整で対応可能な場合と、確定申告が必要な場合もあるため注意しましょう。

参考:国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」
参考:国税庁「[手続名]給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告」
参考:国税庁「[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」
参考:国税庁「[手続名]給与所得者の保険料控除の申告」
参考:国税庁「年末調整で(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の適用を受ける方へ」

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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