給与明細の見方を知ろう!控除や所得税の意味も解説

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給与明細は、勤務・支給・控除・差引支給額の4項目に注目します。たとえば「控除」とは、あらかじめ給与から引かれている金額のことです。

本記事を読めば、給与明細の見方や記載されている項目、年末調整との関係がわかります。

給与明細の見方

記載されている項目ごとに、数字をチェックすることが給与明細の見方のポイントです。一般的に、給与明細は給与支給日までに受け取ります。

給与明細を受け取ったときに、自分で何が書かれているか理解できるように、概要や記載項目について確認しておきましょう。

給与明細とは

給与明細とは、支払われる給与の根拠となる情報が記載された書類のことです。2007年1月の所得税法改正以降、一定の要件下で書面の代わりに電子データでも提供できるようになりました。

労働基準法には、会社が労働者に必ず給与明細を交付しなければならないという決まりはありません。しかし、所得税法第231条で、「給与を支払う者が給与の支払を受ける者に支払明細書を交付しなくてはならない」ことが定められているため、会社は給与支払い時に給与明細の交付が必要です。

給与明細に記載されている項目

給与明細には、給与の根拠となる勤怠情報や支給額、控除額などが記載されています。給与明細を構成している主な項目は以下の4つです。

・勤怠(勤務)
・支給
・控除
・差引支給額

「差引支給額」とは、支給合計から控除合計を引いた金額を指します。ここから「勤怠(勤務)」「支給」「控除」の見方について、それぞれ確認していきましょう。

「勤怠(勤務)」の見方

給与明細の「勤怠(勤務)」に記載されているのは、主に以下の内容です。

・労働日数
・有給休暇取得日数
・有休(有給休暇)残日数
・法定休日出勤日数
・欠勤日数
・遅刻回数
・労働時間
・残業時間
・深夜残業時間
・法定休日労働時間

給与明細を受け取ったら、各日数や時間をチェックするようにしましょう。ポイントをそれぞれ解説します。

各日数をチェックする

勤務(勤怠)に記載されている「労働日数」「有給休暇取得日数」「有休残日数」などの各日数をチェックしましょう。実際に働いた日や休んだ日に相違ないか、確認します。

有休(年次有給休暇)とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために付与される、賃金の減額なしの休暇のことです。

「雇い入れの日から6か月経過している」「その期間の全労働日の8割以上出勤した」という2つの要件を満たした労働者には、年間で10労働日以上の有休が付与されます。

各時間をチェックする

勤務(勤怠)には、「労働時間」「残業時間」「深夜(残業)時間」なども記載されています。給与明細を確認し、実際に働いた時間に相違ないか確認しましょう。

「残業時間」とは、就業規則や雇用契約書で定められた「所定労働時間」か「法定労働時間」を越えて働いた時間のことです。労働基準法では、1日8時間、1週40時間を法定労働時間と規定しています。

また「深夜時間」とは、午後10時から翌日午前5時までの労働時間のことです。関連して、深夜時間に労働することを「深夜業」と呼びます。

参考:厚生労働省「Q.年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。」
参考:厚生労働省「Q.法定労働時間と割増賃金について教えてください。」

「支給」の見方

給与明細の「支給」の基本給や各種手当もチェックしましょう。主に記載されているのは、以下の内容です。

・基本給
・役職手当
・資格手当
・住宅手当
・通勤手当
・残業手当
・休日手当
・夜勤手当

ここから、基本給や各種手当について、解説していきます。

基本給をチェックする

賞与や退職金算出のベースになることがあるため、「支給」の全額だけでなく、基本給にも注目するようにしましょう。基本給に固定手当を加えたものを「月給」、毎月変動する支給額全体を「月収」と表現することがあります。

基本給とは、原則として同じ賃金体系が適用される労働者に全員支給されるものです。一般的に、「年齢」「学歴」「勤続年数」「経験」「能力」「資格」「地位」「職務」「業績」などに応じて決められます。

各種手当をチェックする

給与明細の「支給」には、「役職手当」「資格手当」「住宅手当」「通勤手当」「残業手当」などの手当も記載されています。自分が対象の手当が支給されているか、チェックしておきましょう。

「役職手当」は役職に対する手当のことで、一般的に昇進するほど高額になります。「資格手当」はモチベーション向上のために、従業員の資格取得などのタイミングで加算される手当であり、「住宅手当」とは、従業員の居住費の一部を会社が負担する手当のことです。

「通勤手当」は、従業員の通勤に発生する定期券代やガソリン代などに対して支払われます。「通勤手当」は、条件や金額次第で非課税です。

「残業手当」は、契約や法律で定められている労働時間外の労働に対して支払われます。

参考:国税庁 通勤手当の非課税限度額の引上げについて

「控除」の見方

給与明細の「控除」とは、給与からあらかじめ引かれている金額のことです。「控除」には、主に以下の内容が記載されています。

・健康保険料
・厚生年金保険料
・介護保険料
・雇用保険料
・所得税
・住民税

ここでは「社会保険料」「雇用保険料」「税金」の3つに分けて、控除の概要を詳しく解説します。

社会保険料をチェックする

毎月どれだけ社会保険料がかかっているかもチェックしておきましょう。一般的に、社会保険とは「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」の総称です。

「健康保険」は、勤務先によって3つの種類(組合健保・協会けんぽ・各種共済組合)に分かれます。加入している健康保険の種類や組合、地域によって、健康保険料が異なるため注意しましょう。

また、厚生年金保険とは、会社員として働く人が加入する公的年金のことです。関連して、企業が単独・共同で運営する厚生年金基金もあります。

介護保険は、介護が必要な高齢者を社会全体で支えるための保険です。ただし、介護保険料が徴収されるのは「満40歳に達したとき」からのため、20代の新入・若手社員にはかかりません。

雇用保険料をチェックする

失業して所得を得られなくなった際に、失業給付などを受けるために払う「雇用保険料」もチェックしましょう。雇用保険料は、「1カ月の総支給額(基本給+各種手当)×雇用保険料率」で算出可能です。

数式に含まれる「雇用保険料率」は、年度や事業によって異なります。2023年度における、一般の事業の雇用保険料率は15.5/1,000です。そのうち、9.5/1,000は会社負担のため、労働者は6/1,000を負担します。

所得税や住民税などの税金をチェックする

給与明細の「控除」をチェックすれば、自分に課せられた所得税や住民税の額も把握できます。

所得税とは、その年の所得(副業をしていない会社員の場合は給与)に対してかかる税金のことです。金額は、国税庁の「源泉徴収税額表」に基づき算出します。

住民税とは、居住する都道府県や市町村に納付する税金です。毎年5~6月に1年分の住民税が通知され、その通知書どおりに毎月の給与から控除されます。前年の1月から12月の所得に対する税金のため、前年に一定以上の所得がない新卒入社の方にはかかりません。

参考:全国健康保険協会「介護保険制度と介護保険料について」
参考:国税庁「令和5年分 源泉徴収税額表」

給与明細の見方に関する疑問を解消

最後に、給与明細の見方に関する疑問を解消しておきましょう。

「年収」は税金を引く前?後?

一般的に、「年収」は、税金を引く前の金額のことです。そのため、ローンやクレジットカードなどの申し込みで、「年収」について尋ねられることがあれば、基本的に税金や社会保険料などの「控除」を差し引く前の金額で回答します。

給与明細の「差引支給合計(支給合計 - 控除合計)」を12カ月分合計しても、「年収」にはならないため、年末に勤務先から受け取る「源泉徴収票」の「支払金額」に記載された金額を参照しましょう。

源泉徴収票とは何に使う書類?必要となる主な場面を3つ紹介

給与の締め日・支給日は?

給与の締め日とは、勤怠の期間を区切る最終日のことです。勤務先の勤怠期間が毎月1日から月末の場合、締め日は月末(末締め)となります。

支給日(給料日)とは、給与が従業員に支払われる日のことです。労働基準法第24条に、賃金は「毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならない」と定められているため、給与は毎月決まった日に支払われます。

ただし、支給日は勤務先によってさまざまです。「25日」をはじめ、一般的に「5」「0」のつく日が多いとされています。

給与明細と年末調整の関係は?

年末調整とは、従業員が勤務先を通じて源泉徴収された税額の年間合計額と、年間の税額を一致させるための精算手続きです。年末調整の概要について、詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

年末調整とは所得税の過不足の調整作業!確定申告との違いも解説

年末調整の結果は、12月の給与に反映されることが一般的です。税金を多く徴収されていた場合は12月の給与支給額が増え、少なく徴収されていた場合は支給額が減少します。

年末調整時期に給与明細を受け取ったら「年末調整還付額」「年末調整追徴額」などの記載がないか確認しましょう。

社会人になったら給与明細の見方を知ろう

社会人になったら、毎月給与明細を受け取るようになります。実際の数字と違いがないかチェックするために、給与明細の見方を把握しておくことが大切です。

給与明細には、「勤務」「支給」「控除」「差引支給」が記載されています。ひとつずつ確認していけば、自分が毎月どれだけ働き、どれくらいの保険料や税金が差し引かれたか、理解できるようになるでしょう。

参考:国税庁「給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)に係るQ&A
参考:金融広報中央委員会(知るぽると)「給与明細、チェックするのは振込額だけでいい?
参考:厚生労働省「労働基準法第24条(賃金の支払)について」

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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