量子由来の新指数、初の下げ相場を検証
下落に強い設計は機能した?公表後の実データでの検証
提供元:株式会社三井住友銀行
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今年5月、三井住友銀行と東芝は、量子技術由来の計算技術を活用した新しい株式指数「SMBC/TOSHIBA量子分散」(以下「本指数」)を公表しました。本指数については、前編で開発の背景と銘柄選定の仕組みを、後編では既存指数との違いや長期投資における意義をご紹介しました。
本指数の公表からわずか1カ月後の2026年6月下旬には、日本の株式市場は久しぶりの下げ相場を迎えることになりました。
「下落局面でいかに大きな損失を抑えられるか」―この発想を設計思想の中心に置いた本指数にとって、これは指数公表後初めての実践の場となりました。果たして、その設計は本番の下げ相場で機能したのでしょうか。今回は検証編として、実際のデータをもとに振り返ります。
1.久しぶりの調整局面 ― 市場で何が起きたか
2026年の日本株市場は堅調な展開が続き、主要な株価指数は6月下旬にかけて史上最高値圏まで上昇しました。ところが、その直後に様相は一変します。世界的にAI・半導体関連銘柄への高い成長期待が見直されたことをきっかけに、株式市場は7月にかけて調整し、日経平均株価を含む主要な株価指数には、高値から1割を超える下落となる場面もありました。
今回の下げ相場には、ひとつの特徴がありました。それは、これまで相場をけん引してきた一部の大型銘柄が、下落の中心になったという点です。
TOPIXのような時価総額加重型の指数は、時価総額の大きい銘柄ほど組み入れ比率が大きくなる仕組みです。そのため、組み入れ比率の大きい銘柄が大きく下落すると、指数全体もその影響を強く受けることになります。今回のように、上昇局面の主役だった大型銘柄が売られる展開では、この構図がそのまま下落の要因となりました。実際、この間の下落は、こうした一部の銘柄群にきわめて集中していました。
長く資産形成を続けていれば、こうした下げ相場は避けて通れません。では、この環境のなかで、本指数はどのような値動きとなったのでしょうか。
2.本指数はどう動いたか ― 指数公表後の実データによる検証
図1は、2026年5月末を100として、本指数(日本株)、TOPIX、MSCI日本株最小分散指数の推移を7月末まで比較したものです。
【図1】2026年5月末から7月末の推移比較

出所:S&Pダウジョーンズインデックス、 Bloomberg、東芝のデータをもとに三井住友銀行が作成。
結果として、この期間の本指数は、TOPIXを4%程度、リスクに着目した指数であるMSCI日本株最小分散指数をも1.5%程度上回るパフォーマンスとなりました。市場全体が大きく揺れた6月半ば以降の局面において特に他の指数をアウトパフォームしています。
ここでひとつ、大切な点があります。これまでの記事でご紹介してきた本指数のパフォーマンスは指数の公表前のものでしたが、今回の結果は指数公表後の実際のパフォーマンスです。設計どおりに計算された指数が、現実の市場でどう動くのか、その最初の答え合わせが今回の下げ相場だったといえます。
では、なぜ本指数は下落への耐性を示せたのでしょうか。鍵は、企業の規模ではなく「値動きの相関」に着目する設計そのものにあります。
今回の下げ相場で大きく下落したのは、AI・半導体分野の銘柄群でした。一方、本指数の選定ロジックでは、似たような値動きをする銘柄同士の組合せは、そもそも採用されにくくなっています。実際、公表されている本指数の構成をみると、こうした銘柄群の組み入れは他の時価総額加重型指数に比べ低水準にとどまっており、下落の震源から距離を置いた構成になっていたことが確認できます。
本指数が行っているのは、直近データをもとに「互いに相関の低い銘柄を抽出し、選定する」という、シンプルな設計に基づいた銘柄選定です。量子技術由来のマシンを用いてこのルールを適用して銘柄を選定した結果として、下落の中心となった連動性の高い銘柄群への偏りが自然と抑えられていた。これが、今回の下落耐性の正体です。加えて、過去の値動きのばらつきが小さい銘柄ほど多く組み入れる設計により、値動きの荒い銘柄の影響が小さかったことも下げ幅の抑制に寄与したと考えられます。
もっとも、これはあくまでひとつの局面での結果です。本指数がどのような相場環境でも常に市場平均を上回るわけではありません。たとえば、一部の大型銘柄が相場を強くけん引する上昇局面では、それらの比重が小さいぶん、市場平均に見劣りする場面もあり得ます。それでも、「下げに強い設計」が実際の下落局面で狙いどおりの方向に機能したことは、本指数にとって意味のある第一歩だと考えています。
3.検証から見えてきたこと ― 長期投資への示唆
今回の検証結果は、以前の記事(後編)でご紹介した「長期投資とリスク」の話と、まっすぐにつながっています。
長期の資産形成では、期待リターンが高くてもリスクの大きい運用より、リスクを適切に抑えた運用の方が、累積のリターンでは有利になる場合があります。その鍵は複利の力にあります。下落局面で資産の減り方を抑えられれば、その後の回復局面を有利な位置から迎えることができ、複利の効果を損なわずに資産形成を続けられるからです。
新しいNISA制度のもとでの20年を超えるような資産形成では、今回のような調整局面に、この先何度も遭遇する可能性があります。そのたびに「大きく減らしにくい」設計が働くなら、その効果は長い時間をかけて積み重なっていきます。今回の検証は、本指数の設計思想が現実の市場で目指した方向に機能し得ることを示す、最初の実例となりました。
私たちは現在、本指数に連動するインデックスファンドやETFの商品化に向けた取り組みを進めています。連動するファンドが組成されれば、投資家の皆さまが本指数のパフォーマンスをご自身の投資成果として受け取れる可能性が広がります。実際の下げ相場での検証材料が加わった本指数を、これからの長期投資の新しい選択肢のひとつとして、引き続き見守っていただければ幸いです。
※記事の内容は2026年7月31日現在の情報です
※「量子技術由来分散日本株式指数」「量子技術由来分散米国株式指数」「量子分散」は、株式会社三井住友銀行が商標登録出願中です
【当記事で言及した指数の知的財産権について】
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(三井住友銀行)

